ガードナー・R・ドゾワ他著、伊藤紀夫編訳『海の鎖』2022年10月19日 22:58

2022年 7月 2日読了。
 伊藤典夫編訳によるSFアンソロジー。国書刊行会の「未来の文学」シリーズ。1952年から1985年に発表された作品群で、冷戦の影が濃く、悲観的で後味の悪い作品が多い。
 俺が一番好きというか印象に残ったのは、レイモンド・F・ジョーンズ「神々の贈り物」。自らの愚かさで滅んだ星からやって来た一隻の宇宙船。宇宙船から現れたロボットは、母星の知識を人類に伝えようとするが、人間はそこから何の教訓も学ばない。プーチンはウクライナを攻めるのは「ネオナチから地域を開放するため」と言っており、ロシア国民の支持率は非常に高い。かつて「八紘一宇」だの「大東亜共栄圏」だのという口先だけの理想を信じた国民である我々はそれを見て「人間は歴史から何も学ばない」と思う。
 M・ジョン・ハリスン「地を統べるもの」では、月の裏側で巨大な昆虫のような「神」が発見され、地球にやってくる。神の力で地球はかつてなく穏やかな状況になるが、それを良しとしない者たちが神への攻撃を試みる。神の作った高速道路上を巨大な手や足などの「巨人の部品」を積んだトラックが走っていくイメージのシュールさが良い。
 ジョン・モレッシイ「最後のジェフリー・フェイギン・ショー」は喜劇。「娯楽」という概念のない世界からやって来た退屈な異星人が、突如コメディアンとして覚醒する。

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