日本SF作家クラブ編『AIとSF』2024年04月09日 22:51

 AISFアンソロジー。個人がホビーで使用するコンピュータ、パソコンの登場を予測できなかったSFだが、AI、すなわち人工知能については伝統芸である。生成AIも自動運転もAIの暴走もシンギュラリティも早くから予想していた。そういう意味では、今だからこそ、という作品は少ないが、よく練られた作品が多い印象。練られたというのは、必ずしも思弁的に深いという意味ではなく、何重にも捻りが効いている、という感じ。
 その中で、長谷敏司「準備がいつまでたっても終わらない件」は、大阪万博を扱っていてタイムリーな作品。AIの進歩が予想外に早すぎたため、準備してきた万博の展示がもはや時代遅れになりつつあり、急遽展示内容を変更するという、ドタバタ喜劇。
 イメージ的には円城塔「土人形と動死体 If You were a Golem, I must be Zombie」が一番面白い。ファンタジー的な魔法の支配する世界で、「魔法以外の方法」で世界を御しようとする男の話である。
 また小説ではないが、計算社会学者の鳥海不二夫によるAIの現状解説が面白い。人工知能は過去幾度もキタイとガッカリを繰り返してきたという。

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