J・G・バラード著『旱魃世界』2022年10月18日 21:22

2022年 6月30日読了。
 長編。著者の第三長編『燃える世界』の改訂版。汚染物質の化学反応で、海上を高分子の膜が覆い、陸上に雨が降らなくなり、急速に砂漠化が進む世界。世界の変化と、水を求めてさまよう人々を、主人公の医師ランサムの視点で描く。砂漠化する街を動物園から逃げ出したチーターやライオンが闊歩する。真水を得るため海水を蒸留する副産物として生まれる塩に埋め尽くされている海岸。何よりも、危機的状況を共有しているにもかかわらず、あるいはだからこそ通じ合わない人々の心と主人公の孤独。
 その他にも、はっとするような鮮烈なイメージはたくさんあるのだが、なんだかまとまりがなく全体の印象が焦点を結ばない。以前からなんとなく思っていたのだが、バラードは短編の方が面白いのではなかろうか。切れ味が鋭い感じがすると言うか。

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