宮沢伊織著『神々の歩法』2023年05月27日 01:02

 連作短編集。スーパーヒロイン物。超新星爆発によって吹き飛ばされてきた地球外の知性体が人間に憑依して、地球を破壊し始める。彼らは、超新星爆発と長期にわたる宇宙漂流の影響でみな精神を病んでいる。発狂した宇宙人による地球侵略である。比較的穏やかな狂い方の宇宙人が憑依した八歳の少女が、人類を守るために次々に「漂着」する宇宙人の憑依体と闘う、というのが主筋。
 一番面白いのは、三次元以上の高次幾何学体である宇宙人が繰り出す攻撃の幻想的イメージである。宇宙人の攻撃は高次幾何学的なので、人間の体を使ってある形を描き出すことによって、高次元の力を放出することができる。つまり、踊ることによって力を蓄え攻撃する。題名にある「歩法」とはこの踊りのことである。第三話「エレファントな宇宙」では、宇宙人が宇宙からデータをダウンロードして破壊的な「怪獣」を一種の3Dプリンタで出力しようとする。
 米軍のサイボーグ兵士なども登場するが、あまり強烈な個性を持った登場人物は出て来ない。しかし超人と化した八歳の女の子とサイボーグ兵士たちの心通い合いは温かく楽しい。

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