ジーン・ウルフ著『ウィザード2』2021年01月19日 21:24

17年 9月 8日読了。
 「ウィザード・ナイト」完結。ドラゴン、妖精、巨人、人喰い人種と敵は様々で、人間や神との勢力関係も複雑。そのため勝敗も単純ではなく、更に主人公の最終目的は人類の勝利とは別の処にある。そのため、結末のカタルシスが弱いが、神話的な酩酊感の如き物は増しているのかも知れない。
 登場人物の行動には一応説明が付いているが、どうも共感できにくい物が多い。これは俺の読み方が浅いのかも知らぬが、あるいは神話の登場人物の記号性の如き物を表現しているのかも知らぬと思う。いずれにせよ、主人公の成長を描く教養小説であるにも拘らず、現代のエンターテインメント的な物語のダイナミズムは弱く、断片的な挿話の積み重ねの印象。神話であればそれで良いのかも知れない。作家など、小説を良く知る人たちに支持される理由もそこであろうか。
 神話の面白さって何だろう。ディティールがなくて曖昧だから如何にでも解釈できちゃう処も一つだろうな。口承文芸だから沢山バリエーションが在ってどれが正しいという事もないとか。元型性とはそういう事だろうか。

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