ファン・ホセ・サエール著『孤児』2019年07月14日 21:26

14年 8月12日読了。
 大変に面白い。十六世紀、新世界での成功を夢みてスペインを出航した水夫の主人公は、南米でインディオに捕われ彼らの集落で十年間を過ごし、救出されて故郷に帰って来るが、彼の目には故郷の人々は全て空っぽの生ける屍のように見え、あのインディオたちこそが人間であるように思えるのだった。最も面白いのは、作者が創り出した架空のインディオ部族の奇妙な世界観人間観が徐々に明らかに成っていく処。貿易に依る繁栄に湧くスペインの人々の空虚さに比べ、インディオたちの抱える問題は、存在への疑いという、殆ど近代哲学的な物である。

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