ヘンリー・カットナー著『ロボットには尻尾がない』2023年05月05日 22:31

 連作短編集。SFではおなじみのマッドサイエンティスト物のドタバタ喜劇。書名がなんともシュールで素晴らしい。主人公のギャロウェイ・ギャラガーは、泥酔した時だけ天才になる科学技術者。酔いが醒めると目の前に自分の作った発明品があるのだが、何の役に立つのか、どんな原理で動くのかさっぱり覚えていない。依頼者からは既に手付金を受け取ってしまっている。という状況の中で、自分の発明品の機能を探る、というのが毎回の基本的な展開形式。
 「世界はわれらのもの」で、ギャラガーがつくったタイムマシンで、未来の火星からうっかり呼び寄せてしまった知的生物が面白い。兎くらいの毛皮に包まれた生物で、たった三人で地球を征服する計画を立てている。どんな計画か尋ねると、まず大きな都市をいくつも破壊する。そして「かわいこちゃんたちを捕まえて、人質にする。そうすれば、誰もが恐れおののいて、われわれが勝つ」(p.65)。全員が恐ろしく楽天的で、計画の成功を信じて疑わないが、ギャラガーの元でやっていることはミルクとクッキーをもらって食べることだけである。
 「うぬぼれロボット」は、星新一のショートショートのようなタイトルだが、ナルシストのロボットが登場する。テレビ会社のオーナーがやってくると、自分に出演依頼をしに来たと思い込む。誰もそんなことは言っていない。「出演料を値切りたくて、わざとらしく、わたしをほしくないなんてフリをする必要はありませんよ」(p.137)。噛み合わない頓珍漢な会話が展開する。

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