トム・ジョーンズ著『拳闘士の休息』2019年07月18日 23:32

14年 8月15日読了。
 短編集。ベトナムで戦うアメリカ兵、浮気な女と別れられない男、癲癇患者、余命半年と宣告された癌患者、アル中に成った元ボクシングチャンピオンなど、傷付き袋小路に入り込んだ人達の物語。度々ショーペンハウアーが話題に成る事でも判るが、主人公たちは人生は苦痛に満ちていると感じ、多くは希望も捨てている。にも拘らず、輝くような高揚に包まれる瞬間がある(長続きしないが)。それは宗教的な神秘体験にも似ているが、宗教的倫理的な啓示や理解は伴わない、即物的と言っても良いような感情の高ぶりである。それが、彼らの人格を変えたりはしないし、人生に良い影響を齎す訳でもない。相変わらず苦痛に満ちた人生が続くばかりだが、彼らは「降りる」事をしない。陰鬱でありながら奇妙な活力を持って最後まで生きようとする。
 追記 アメリカ現代文学にはこの種の物が多く、後に俺はそれを「元気な絶望」と名付ける。

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