月村了衛著『機龍警察 未亡旅団』2019年05月08日 22:06

14年 4月 2日読了。
面白かったけど、これまでの三巻に比べると散漫な印象。多くの挿話が最後の場面に収斂していくようなカタルシスがないと言うか。歪んだ母性、というのが一つの主題であろうが、そこがもう一つ焦点を結ばない。それから、テロリストのリーダーの女性と、一人の政治家とその妻の間に一種の三角関係があるのだが、その緊張感も読者に伝わって来ない。いや、勿論面白い点も多い、と言うか全体としてはとても面白い。主人公の一人であるかつてテロリストだった女とテロリストの少女がただ一度言葉を交わす場面には、それ自体にも緊張感があり、作品全体の中でも重みを持つ。これは基本だが活劇も面白いし。警察官僚の嫌らしさや国際情勢の複雑さも、何時も通り丁寧に描かれている(でもちょっと飽きた)。これからはシリーズ全体を貫く物語(沖津部長の正体とか、「敵」は誰かとか)が動き始めるのであろう。

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