セシル・デイ=ルイス著『オタバリの少年探偵たち』2023年12月28日 22:48

 岩波少年文庫。第二次大戦終戦直後のイギリスの地方都市オタバリ。この町の少年たちはテッドの率いるグループとトピーの率いるグループが何かと競い合っていたが、少年たちの一人が割った学校のガラスの弁償代金を稼ぎ出すことでは一致団結した。ところが、皆で苦労の末に集めたお金が何者かに盗まれてしまった。少年たちは探偵活動を開始するが、いつの間にか悪党の犯罪を嗅ぎ当ててしまう。推理小説は読まないので、題名から、俺向きではないかもしれぬと思いながら読み始めたが、むしろ冒険活劇的な展開で楽しめた。
 語り手は、二つある少年グループの一方のリーダーであるテッドの軍師役にあたる少年。もう一方のリーダーであるトピーの性格が面白い。語り手がテッドとトピーを比較する部分を引用しよう。
 「トピーはぼくが知っているだれよりも大胆不敵で、ワニのあごからでも要領よく抜け出してこられるやつだ。テッドはそれほど機敏ではないが、断固としていて頼りになることにかけては上だ。トピーが出たとこ勝負のかけひきの名人なら、テッドは生まれついての戦略家だ」(p.169)。
 テッドは義理堅く友情に熱い正義感だが、とぴーはただひたすら面白さを追求している。テッドたちと協力するのも、友情や正義のためというより、ごっこではない本物の犯罪を捜査することに興奮したためである。
 敵対的だった二つのグループが、少年たちの外部に本物の敵がいると気付いた瞬間から一致団結して行動を開始するところは痛快である。
 途中、シャーロック・ホームズマニアの男が登場して少年たちに協力するが、操作を混乱させるばかりで何の役にも立たないところなども愉快。クライマックスの少年たちによる犯罪者たちへの総攻撃も臨場感たっぷりである。
 著者は、イギリス詩人の最高の栄誉である桂冠詩人であると同時に人気推理小説作家。

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