大岡信編『星の林に月の船 声で楽しむ和歌・俳句』2023年09月16日 22:43

 万葉の昔から近現代まで、日本語の詩歌の中から小中学生向けのものを選んだもの。詩歌のことは全く判らないのだが、言葉がずれる、あるいは拡張される面白さがあるのかな、と思う。日常的に使い、よく知っているはずの言葉が、意外な言葉と組み合わされることによって、思いがけない情景や情緒に結びつく、そこにはっとする驚きや滑稽味があるように思った。以下に好きなもの。
 「春風や鼠のなめる墨田川」小林一茶(p.139)。出来事としては川渕で鼠が水を飲んでいるだけなのだが、言葉としては「隅田川を舐める」という稀有壮大なことになっているのがおかしい。「岩にしみいる」などもそんな感じがあるので、小林一茶は何でもないこと大げさに言うのが好きなのかな、とも思う。
 「蝶墜ちて大音響の結氷期」富沢赤黄男(p.204)。凍り付いた世界に蝶が落ちて大音響が鳴る。シュルレアリスムである。
 「戦争が廊下の奥に立ってゐた」渡辺白泉(p.212)。もちろん太平洋戦争の話だが、時節柄どきっとする。

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