斎藤惇夫著『グリックの冒険』 ― 2020年02月11日 21:50
15年11月29日読了。
ちょっと文句の付けようがない。全編に満ちる緊迫感も素晴らしいし、登場人物(人間じゃないけど)も皆魅力的。まだ見ぬ故郷を目指す旅という基本設定に浪漫を感じぬ者は小説を読む資格がない。
ちょっと文句の付けようがない。全編に満ちる緊迫感も素晴らしいし、登場人物(人間じゃないけど)も皆魅力的。まだ見ぬ故郷を目指す旅という基本設定に浪漫を感じぬ者は小説を読む資格がない。
斎藤惇夫著『ガンバとカワウソの冒険』 ― 2020年02月12日 22:09
15年12月 2日読了。
ガンバシリーズの前二作に比べると、冒険小説としての完成度が低いのは、現実の四万十川の地理に合わせて話が進行するためかも知れない。カワウソという滅び行く種族が描かれている訳だが、一つの種が滅ぶという事がまだよく消化されていない感じもする。
一見お荷物に見えるマンプクの活躍が嬉しい。前半、カモメのキマグレのキャラクターが抜群に良いのだが、終盤ただの善い人(カモメ)に成ってしまうのがちょっと残念。エンコウ(河童)の存在ももうちょっと活かせなかったかなあ。
ガンバシリーズの前二作に比べると、冒険小説としての完成度が低いのは、現実の四万十川の地理に合わせて話が進行するためかも知れない。カワウソという滅び行く種族が描かれている訳だが、一つの種が滅ぶという事がまだよく消化されていない感じもする。
一見お荷物に見えるマンプクの活躍が嬉しい。前半、カモメのキマグレのキャラクターが抜群に良いのだが、終盤ただの善い人(カモメ)に成ってしまうのがちょっと残念。エンコウ(河童)の存在ももうちょっと活かせなかったかなあ。
舟崎克彦著『ぽっぺん先生の日曜日』 ― 2020年02月13日 20:23
15年12月 3日読了。
本の中に入り込んでしまう、という着想は別に珍しくないが「あの古ぼけた家に生まれて、古めかしさといっしょに育ってきた三十八年の年月こそ、ほんのつかの間の夢で、まぎれこんだ絵本の中の世界こそ現実だったのではないでしょうか」という存在への疑いを子供の読者に共感できる形で表現されているのが素晴らしい。
登場人物達も皆魅力的で、おかしな特徴を持っているというだけでなく、それぞれに(奇妙な)人格的統一性が在り、それなりの人生観や世界観を語る処が面白い。子供騙しにへんてこなキャラクターを作ったという物ではないのである。ストーリーにもっと構築性があれば尚良かったが、小学生向けならこれで良いような気もする。
本の中に入り込んでしまう、という着想は別に珍しくないが「あの古ぼけた家に生まれて、古めかしさといっしょに育ってきた三十八年の年月こそ、ほんのつかの間の夢で、まぎれこんだ絵本の中の世界こそ現実だったのではないでしょうか」という存在への疑いを子供の読者に共感できる形で表現されているのが素晴らしい。
登場人物達も皆魅力的で、おかしな特徴を持っているというだけでなく、それぞれに(奇妙な)人格的統一性が在り、それなりの人生観や世界観を語る処が面白い。子供騙しにへんてこなキャラクターを作ったという物ではないのである。ストーリーにもっと構築性があれば尚良かったが、小学生向けならこれで良いような気もする。
船崎克彦著『ぽっぺん先生と帰らずの沼』 ― 2020年02月14日 21:49
15年12月 5日読了。
第1章と第2章のナンセンスな会話が良い。トノサマガエルの沼の統治計画など爆笑する。ちょっと『アリス』を連想する処もある。後半、先生が人間に戻る方法を模索する事が中心に成り、ナンセンスな会話がなくなって行くのが少し残念。アリの行動がフェロモンで誘発されるなど、妙に生物学的な着想が混じるのも面白い。
第1章と第2章のナンセンスな会話が良い。トノサマガエルの沼の統治計画など爆笑する。ちょっと『アリス』を連想する処もある。後半、先生が人間に戻る方法を模索する事が中心に成り、ナンセンスな会話がなくなって行くのが少し残念。アリの行動がフェロモンで誘発されるなど、妙に生物学的な着想が混じるのも面白い。
船崎克彦著『ぽっぺん先生と笑うカモメ号』 ― 2020年02月16日 23:55
15年12月 7日読了。
俺にはやはり前半の「ヒサシブリ」「ブチカマス」などの奇妙な魚が次々に現れる部分の言葉遊びが楽しい。後半、ぽっぺん先生が巻き込まれた不思議な漂流に、先生自身の子供時代の記憶が関係している事が明らかに成るので、これは精神分析的な展開に成るのかと思ったのだが、そっちには行かなかった。
最後まで、本当の悪役というものは現れず、寧ろ人類文明へ疑問を投げかける形で終わっている。高尚と言えば高尚だが、子供の読者にはすっきりしない思いが残るかも知れない。それで良いのかも知れないが。
俺にはやはり前半の「ヒサシブリ」「ブチカマス」などの奇妙な魚が次々に現れる部分の言葉遊びが楽しい。後半、ぽっぺん先生が巻き込まれた不思議な漂流に、先生自身の子供時代の記憶が関係している事が明らかに成るので、これは精神分析的な展開に成るのかと思ったのだが、そっちには行かなかった。
最後まで、本当の悪役というものは現れず、寧ろ人類文明へ疑問を投げかける形で終わっている。高尚と言えば高尚だが、子供の読者にはすっきりしない思いが残るかも知れない。それで良いのかも知れないが。
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