神林長平著『アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風』2023年04月11日 22:32

 待ちに街に待ちに待った雪風の新作。待っただけのことはある面白さ。FAFとの総力戦の後姿を消したジャムを誘い出すため、クーリィ准将は「ジャムを演じる」アグレッサー部隊を新設する。模擬戦闘で適役を演じるのがアグレッサーだが、クーリィ准将の思惑には、ジャムが人間の偽物を作り出したように、人間がジャムを作ることで敵を理解するということもある。奇妙に思弁的な、それでいて戦闘に直接関わる不思議な会話が読みどころの一つ。二機の航空機を重ね合わせて見せたことなどから、ジャムは量子的存在でないか、と示唆されたことが注目される。
 「ジャムは<情報>を食うのだ」というセリフを読んだ時には、やられた、と思った。俺も情報をネゲントロピーとして取り込む生物、もしくシステムというのを考えていたのである。まあ、俺が考える程度のことは既に誰かが考えているということである。
 新たな人物も登場する。日本空軍のエースパイロットの田村伊歩大尉。彼女は言う「もし奇跡が起きて願いが叶うとしたら、わたしは破壊と殺戮の神になりたい」。自分の暴力衝動を開放することが彼女の行動原理である。インド神話の破壊と殺戮の地母神カーリー・マーが彼女のシンボルイメージである。「暴力そのものになりたいというわたしの願い」。FAFなら、ジャムを敵として戦うなら、望が叶うと彼女は気づく。
 続編が雑誌で連載中だという。今度はそんなに待たされないだろう。

コメント

_ (未記入) ― 2024年07月15日 01:02

ごめんなさい、前回のゴジラSPの小説について質問させてもらった者です。
あちらのサイトでのコメント数が上限を超えましたので、こちらの方で質問させてもらっても宜しいでしょうか?

_ (未記入) ― 2024年07月15日 20:20

ゴジラSP小説冒頭のプロローグで「それ」が見ている過去と未来が好き放題絡み合って可能性の限りを尽くしたあらゆる夢の集合体というものがでできますが、この夢の集合体というのは何を表していると思われますか?

_ かすてら ― 2024年07月15日 21:14

 ちょっと曖昧な言い方になりますが「可能性としてのエネルギー」のようなものではないでしょうか。エントロピーの低さというか、ポテンシャルというか、そういう「自分が何に成り得るか」ということ。自由というエネルギー。

_ (未記入) ― 2024年07月15日 22:33

ちなみにそれらの夢は決して醒めることのできない夢と続きで書かれていましたが、何故醒めることができないのでしょうか?
これもかすてらさんの解釈で大丈夫です。

_ かすてら ― 2024年07月16日 21:35

現実も夢だから。

_ (未記入) ― 2024年07月16日 23:42

破局はこの世界のみならず、隣の世界、ひいては未来現在過去をも灼き尽くす可能性もあると書かれていますが、仮にその破局で全ての並行世界を破壊された場合、「それ」が見ている夢(過去と未来の絡み合ったあらゆる可能性の夢の集合体)はどうなると予想されますか?

_ かすてら ― 2024年07月17日 21:40

「それ」が世界の一部なら、破壊された世界とともに破壊されることになりますが、「破壊」は「消滅」とは、微妙に違うので、破壊されたそれと世界の「残骸」が残ることになります。そこがエントロピーの極大で、すべての終焉という可能性もあります。しかし、残骸が新たな夢を見始める可能性もあるでしょう。

_ (未記入) ― 2024年07月18日 12:12

「それ」が見ている夢は「決して」醒めることのできない夢とありますが、破局で全ての並行世界が「破壊」もしくは「消滅」した場合は「それ」は夢から醒めるということになるのでしょうか?

_ かすてら ― 2024年07月18日 20:56

 覚めることがあるとすれば、夢ではない「現実」が存在することになりますね。夢の外部が。

_ (未記入) ― 2024年07月19日 00:59

夢が現実だとすれば醒めない。夢が現実ではなかったら醒めるということでしょうか?

_ (未記入) ― 2024年07月19日 01:14

それか、過去と未来の絡み合った夢の集合体は現実の世界ではなくて、「それ」(ゴジラ)がこれまでに体験した物語を指しているとか?
過去において未来の夢を未来で見続けていたということは、プロローグの話の時点でそれらの事柄は終わっており、今までの世界で「それ」が敵と戦ったり、世界を滅ぼしたり(破局)した事をずっと繰り返しており、それらの一連の流れを夢として見続けていたという感じで。

_ かすてら ― 2024年07月19日 21:43

「話の始まりの時点ですべての事柄は終わっている」という着想は、視点の次元が一つ繰り上がっていて素晴らしいですね。
 そういう視点で見ると、ずっと繰り返している、というより、高次元のレベルでは話の始めも終わりも途中もすべてが「同時に」すでにある。例えば、本の中には始めも終わりも途中もすべて書かれているように。

_ (未記入) ― 2024年07月22日 15:38

ころころ質問変えて申し訳ありません。
P303ページで様々な次元へ腕を伸ばした分子と書かれていましたが、この様々な次元というのはこの世界の3次元空間と1次元の時間のみを表しているのでしょうか?
それとも4次元時空だけでなくそれ以外の次元(クモンガの触角の説明であった並行世界の存在する無数の次元)にも腕を伸ばしているという意味になるのでしょうか?

_ かすてら ― 2024年07月22日 21:32

 例によって本の内容を覚えていないので、ここに書かれた文章だけから判断すると、四次元と書かずにわざわざ様々な次元と書いているのだから、いろいろな次元に広がっていると考えた方が良いのではないでしょうか。むしろ、重要なのは、高次元構造体は三次元で覆っても閉じ込められない、という点ではないかと思います。三次元的に密室でも、高次元を迂回して外に出ちゃう。

_ (未記入) ― 2024年07月23日 02:12

ありがとうございます。一個前の質問であらゆる夢の集合体は過去の「それ」(ゴジラ)が体験した物語と自分は言いましたが、その中で「それ」は永遠に闘争を繰り返していたとあり、見ている夢も果てがなく決して醒めることのできない夢とも書かれていました。
ということはずっと戦いを繰り返すうちに存在する世界全てを滅ぼしてしまい、その後に「それ」が夢を見るようになった。一見、永遠に闘争繰り返すとは矛盾しているような感じがありますが、全てが終わった後にそのまま夢を見続けることによって「それ」にとってはあたかも戦いがそのまま続いているような感じになる。でも実際は無限に近い回数の過去の戦いを夢として見ているだけで、その夢も最後の戦いの夢が終わったら最初の戦いの夢に戻り、それを永遠にループしているという解釈にも取れました。
だから夢も果てがなく、闘争も永遠に続くというニュアンスなのかなと思いました。
まああくまでも自分の解釈なので、合ってるかはわかりませんが(笑)。

_ かすてら ― 2024年07月23日 21:29

 これまでにも何度か言ったと思いますが、合っているかいないかということは重要ではないと私は思っています。重要なのは、その読み方が、面白いか面白くないか、豊か貧しいかということだと思います。果てがなく永遠に続く夢の闘争という解釈は面白く、豊かだと思います。

_ (未記入) ― 2024年08月03日 15:51

何度か質問させていただいている破局についてなんですが、「ゴジラがこの世界を灼き尽くし、隣の世界をも灼き尽くし、未来を現在を、ついでに過去をも灼き尽くすこともなしとはできず、自らをも灼き尽くす可能性もあり得た」という文の解釈として、今回の破局でこの世界のみならず他の並行世界全てが同時に灼き尽くされる可能性があるという意味合いなのか、それともゴジラがこの世界を破局で灼き尽くした後に、他の並行世界に行ってそれぞれの世界で同じ破局を繰り返した結果、全て灼き尽くされる可能性があるという意味合いなのかどちらの解釈の方が適切と言えますか?

_ かすてら ― 2024年08月04日 21:15

 適切かどうかはわかりませんが、私のイメージでは、ゴジラがほかの世界へ行くのではなく「すべての並行世界のゴジラはつながっている」のです。並行世界のイメージが離散的ではなく、連続的なんですね。その場合、もちろんゴジラ以外のあらゆるものが並行世界で連続的につながっているのですが、私たちが三次元空間あるいは四次元時空間しか意識できないのに対して、ゴジラは高次元に意識的なのであろう、と考えています。

_ (未記入) ― 2024年08月05日 19:28

つまり上の文の灼き尽くす云々というのは、ゴジラがこの世界のみならず全ての並行世界に繋がっている為、破局を起こせばこの世界だけでなく全ての並行世界も巻き込まれかねないということを示唆している文ということなんですね。
もしそうだとすると、小説の別の箇所で言われていた、「特異点は一種の卵のようなものであり、ゴジラを別の宇宙に向けて孵化させる器にすぎない」という文での「別の宇宙」というのは何を表していると見るのが妥当なのでしょうか?
もし全ての並行世界を巻き込むなら、他に宇宙は無くなるような気がするのですが・・・

_ かすてら ― 2024年08月05日 21:25

 「別の宇宙に向けて」というのをどう解釈するかがポイントになりそうですね。「ゴジラは無限の並行宇宙を永遠に破壊し続ける」という解釈は可能ですね。ゴジラは生まれ続け、宇宙は死に続ける。あんまりおもしろい解釈じゃないかな。

_ (未記入) ― 2024年08月05日 22:10

それか破局のページで真空の相転移についての説明があったり、登場人物が(破局を起こしたら)宇宙が生まれる寸前とか、この宇宙から新たな宇宙が生まれて、今の宇宙は引き裂かれて次の輪廻に挑むとかの言及があったので、もしかしたら上での「別の宇宙」とは破局で既存の宇宙(全ての並行世界を含む)が破壊された後に新しく宇宙が生まれ、その新しくできた宇宙のことを指しているとか?

_ (未記入) ― 2024年08月06日 16:11

連投申し訳ありません。
これらの解釈からして、かすてらさんは「ゴジラがこの世界を灼き尽くし、隣の世界をも灼き尽くし、未来を現在を、ついでに過去をも灼き尽くすこともなしとはできず、自らの存在さえ灼き尽くす可能性さえありえた」という文は今回の破局だけによって全ての並行世界が破壊される可能性を言っているのか、今回の破局でこの世界のみが破壊され、それ以降もゴジラは他の並行世界で破局に永遠に繰り返し全ての並行世界を破壊し続ける可能性のことを言っているのか、どちらの解釈として受けていますか?

_ かすてら ― 2024年08月06日 21:39

 繰り返すというか、波が伝わるようにどこまでも伝わっていく感じ。

_ (未記入) ― 2024年08月06日 22:52

破局がどこまで伝わるとすれば、全ての世界が破壊させるまで破局は収まらないということでしょうか?
それとも一定で破局の影響は止まるのでしょうか?
あと「別の宇宙に向けてゴジラを孵化させる云々」はかすてらさんにはどう解釈できますか?
あくまでもかすてらさんの考えで構いません。

_ かすてら ― 2024年08月07日 21:31

 破局(ゴジラ)が波のように伝わっていくとすれば、我々の世界では波は減衰してどこかで消えます。波が持続するとすれば、どこからかエネルギーが加わっている構造があることになります。もっとも、高次元世界でも我々の世界のようなエントロピー増大の法則が成り立つとは限らず、外からのエネルギーなしに波は持続するのかもしれません。ゴジラのエネルギー源は何か。破局そのものがゴジラの餌なのかも。つまり、宇宙の破壊を続けないとゴジラは自分を維持できない。
 「別の宇宙に向けてゴジラを孵化させる」というのは、私のイメージでは、ゴジラの存在自体が新たなゴジラの存在の原因となる、という感じです。今日の自分が明日の自分の原因となっている、というような因果の波が、時間方向ではなく、高次元の別宇宙方向へ伝わっていく感じです。

_ (未記入) ― 2024年08月09日 12:45

破局を起こせばゴジラのいる宇宙だけでなく、他の宇宙にも影響与えるけど、全ての宇宙に必ずしも影響を与えるわけではないから、その破局の影響を受けなかった宇宙にゴジラを誕生させるとかそんな感じでしょうか?

_ かすてら ― 2024年08月09日 21:49

 私の並行宇宙観は、離散的ではなく連続的なので、イメージを正確に伝えようとすると「隣の宇宙」という言葉は使えないのですが、わかりやすくするために比喩的に言うと、「隣の宇宙へ隣の宇宙へとゴジラは永遠に生まれ続ける」という感じです。

_ (未記入) ― 2024年08月10日 18:17

かすてらさんの解釈を受けると、この世界でゴジラが破局を起こす→隣の宇宙に特異点ができる→その特異点を起点として新たなゴジラが隣の宇宙に出現する→隣の宇宙でゴジラが破局を起こす→隣の宇宙のまた隣の宇宙に特異点ができる→特異点を起点に隣の宇宙の隣の宇宙にゴジラが出現・・・etcをひたすら繰り返すという感じでしょうか?
その場合だとゴジラが一度の破局で影響を与える範囲は一つの宇宙だけということになりますか?

_ (未記入) ― 2024年08月10日 18:23

もし自分の解釈違いだったら指摘してもらっても構いません。

_ かすてら ― 2024年08月10日 21:39

 一度に影響を与える範囲、というとき「一度」とはどのようなイメージですか。つまり並行宇宙を外側から俯瞰してみたとき、「時間」はどのように見えるとお考えですか。
 私は、時間を含めた時空を見通すような視点、過去も現在も未来も「同時」に見る視点を想定していて、並行宇宙を次々に伝わっていく破局(ゴジラ)というのは、もう一つ上の「超時間」的な変化のように考えていました。

_ (未記入) ― 2024年08月11日 10:16

自分はゴジラがその世界に降り立った後に破局を起こして世界を灼き尽くすという一連の流れを1つの始まりと終わりと考えてました。
小説のプロローグでも自らの始まりと終わりを繰り返していたとあったので、ゴジラは世界を破局で破壊する度に何度も生まれ変わっているという認識でいたのですが、その繰り返しのつどに行われる破局の破壊範囲は降り立った世界のみに収まるのか、他の世界にも影響を及ぼすのかがわからない感じです。

_ かすてら ― 2024年08月11日 21:59

 私のそのあたりの認識は完全に連続的です。隣の世界という言い方がまずいのかもしれませんが、私のイメージでは、隣の世界というのは実はありません。時間においては、ある一瞬と次の一瞬は実は分かれておらず、つながっています。そのように、ある世界と隣の世界はつながっているのが、私の並行世界イメージです。一つの世界が三次元の空間と一次元の時間の四次元時空なら、並行世界は五次元宇宙であり、並行に並んだ別々の世界があるのではなく、すべての世界はつながっているイメージです。だから、ゴジラの誕生と世界の破局も、一つ一つばらばらの始まりと終わりがあるのではなく、すべてつながりながら伝わっている。これが私のイメージです。

_ (未記入) ― 2024年08月11日 23:19

小説内でも四次元時空と直交して伸びる無数の次元というユークリッド空間やヒルベルト空間を思わせる記述があったので、それらの次元に世界が全てあってかつそれらが全てつながっているという解釈もできますね。
その場合、ゴジラを別の宇宙に孵化させるという文の「別の宇宙」は何を表しているのかが気になりますが。
もしかして並行世界ではなく物理法則の全く違う宇宙のことを指している可能性もあるのでしょうか?

_ かすてら ― 2024年08月12日 21:46

 一つの四次元の時空は、つながった五次元宇宙の断面のようなものです。金太郎飴は三次元的につながっているけど、ぱきんと折った断面は一つの二次元平面に見えます。五次元的にはつながっているけど、我々にはその一つの断面である四次元世界しか見えないわけです。別の宇宙というのは、つながっているけど見えない別の断面、という意味ではないでしょうか(←つまらない解釈)。

_ (未記入) ― 2024年08月13日 20:01

小説内で、(破局によって)この世界、隣の世界、未来現在ついでに過去を灼き尽くすことも・・・という記述や、真空の相転移の説明や劇中の人物が「この宇宙から新たな宇宙が生まれて、この宇宙は引き裂かれて次の輪廻に臨むことになったかもしれない」というセリフも言っていたのでもしかしたら、破局によって全ての次元の宇宙が破壊されて、その後に新たな宇宙が生まれて、その新たな宇宙にゴジラを誕生させるという解釈も可能なのではないのかなと個人的には思いましたが。
新しくできた宇宙を別の宇宙という風に言い換えていたみたいな。

_ (未記入) ― 2024年08月13日 20:04

それか「別の宇宙」は並行世界のある5次元宇宙ではなく、それよりも更に上の6次元宇宙やら7次元宇宙やらを指しているのか。

_ かすてら ― 2024年08月17日 22:00



 すいません。お盆の間は飲んだくれておりました。並行世界の「別の宇宙」というのを「存在可能な全ての宇宙の一つ」と考えると、「新しい宇宙」も存在可能な宇宙の一つのはずなので「新しい宇宙も既に存在していた可能宇宙の一つに過ぎない」という矛盾した理屈になります。
 全ての可能性が並行して存在しているなら、それ以上の可能性はあり得ず、何も変化は起こらないことになります。可能なことは全て起こっているわけだから。そこでさらに変化があるとすれば、おっしゃる通りで、もう一つ上の次元を考えざるを得ない、と私も思います。
 並行宇宙の五次元世界は、すべての可能性を含む無限の広がりではなく、有限の世界であり変化は可能である、という考え方もできますね。我々の住む時空が、三次元的に閉じた有限の世界であるように。この場合は高次元を想定しなくても、新たな宇宙が可能になります。

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