太宰治著『走れメロス 富嶽百景』2020年02月06日 20:43

15年11月18日読了。
 「魚服記」が好き。「女生徒」や「走れメロス」はともかく、「お伽草子」や「畜犬談」の屈折したユーモアは岩波少年文庫に相応しいような相応しくないような。

ラフカディオ・ハーン作『雪女 夏の日の夢』2020年02月07日 21:28

15年11月19日読了。
 八雲を読むと何時もの事だが、日本はこんなに素晴らしい国であったかと錯覚する。特に「夏の日の夢」で人力車に揺られながら見る夢が素晴らしい。民話では、結末が付いていない或いは失われている話、謎が解かれていない話、教訓のない話、救いのない話などがあり、不条理感が漂って面白い。口承文芸は、語り継がれる内に語り手が意図せぬ変形が加わって訳が判らなく成る事もあるのだろう。

杉浦明平著『今昔ものがたり』2020年02月08日 21:39

15年11月21日読了。
 因果応報譚や判り易い教訓話も多いが、何の事やら判らぬシュールな話もある。「浮気心の報い」や「追いはぎよけの妙案」は落語的な滑稽話。謎解きをあえて避けた「鏡箱の歌」が潔い感じがして好き。巻頭の「悪人往生」をあとがきでは「胸がすかっとする」などと書いているが、俺はむしろ「感覚的には判るような気もするが、論理的には良く判らない」宙ぶらりんな不思議な感じを楽しんだ。もっと痛快なのは常の者には窺い知れぬ武士の父子の阿吽の呼吸を描いた「馬どろぼうと頼信父子」であろう。

池内了編『雪は天からの手紙 中谷宇吉郎エッセイ集』2020年02月09日 22:57

15年11月24日読了。
 「『霜柱の研究』について」という随筆が大変に興味深かった。これは、物理学には素人であろう自由学園の女子生徒が行った霜柱の研究報告に対しての感想である。生徒たちの年齢は書いていないが、発表当時自由学園に大学部はなかったから高校生であろう。著者はこれを「広く天下に紹介すべき貴重な文献」と高く評価している。物理学について専門的な教育を受けていない者でも、しっかりした手順を踏み注意深く観察をすれば、立派な研究ができるという事を証していると言うのである。
 著者と共に俺が気に入ったのは、しかつめらしく眉間に皺を寄せるのではなく、若い女性らしい強い興味故に発揮される注意力と楽しい雰囲気である。「私はこの直感的の推理は、既知の知識の集積から来るものではなく、現場に対して持つ興味の純粋さから来るものとぼんやり考えていたが、今その実例を見て非常に喜ばしく思っている」(p.234)。
 著者は寺田寅彦の弟子だが、寺田同様、定性的データを定量化すなわち数値化せずに尚且つ科学的に取り扱う方法を模索している事が「茶碗の曲線」「比較科学論」などから判る。そしてこの模索はどうも現在まで続いているようなのである。

斎藤惇夫著『冒険者たち ガンバと15匹の仲間』2020年02月10日 21:40

15年11月27日読了。
 最初に読んだのは小学生の時で、今回は四回目か五回目に成ろう。最初に読んだのが多感な時期だったせいかも知れぬのだが、日本の冒険活劇系エンターテインメント小説で、斎藤惇夫のガンバシリーズと平井和正のウルフガイシリーズを超える物に出会った事がない。