瀬名秀明著『新生』2019年10月12日 22:12

15年 3月 3日読了。
 小松左京へのオマージュ作品三編収録。オマージュは便利な言葉だが、ここでは敬意を込めた模倣や改変の意。「ミシェル」では小松の『虚無回廊』を元に著者が独自に展開する「実-虚-無」の思想、宇宙観に「ゴルディアスの結び目」の物語が絡んで進行する。全体にある種の予感が満ちている。それも「この宇宙の向こう側」というような、決して到達する事のないであろう物の存在の予感である。予感は到達できない物の存在を知ってしまった事の悲しみを伴う。それでもある種の知性はそこを目指す事を止められない。到達できない事を予感していても。
 ところで、科学という物の性質として普遍や一般といった「統合」の方向へ進もうとするのは判るのだが、宇宙、特に生命と知性にはそれとは逆に「多様化」しようとする強い性質があると思うのだが、それは「実-虚-無」の思想ではどのように位置付けられるのであろうか。

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