ヒュー・ロフティング著『ドリトル先生アフリカゆき』2022年09月07日 23:03

2022年 1月 5日読了。
 ドリトル先生シリーズの第一巻。オウムのポリネシアに動物の言葉を教わったドリトル先生は、感染症に苦しむアフリカのサルたちを救うため、旅に出かける。一応ストーリーはあるが構築性は低い。少なくとも、ラスボスをやっつけて大団円、という構成ではない。断片の積み重ねである。
 欲のないドリトル先生の人柄と、全体にユーモラスな語り口が魅力。イメージ的には、アフリカの王様からの逃亡劇で、サルが谷に橋を架けるところが一番面白い。

ヒュー・ロフティング著『ドリトル先生航海記』2022年09月08日 21:41

2022年 1月 8日読了。
 長編。と言っても、あまり複雑な構築性はない。パドルビーを船で旅立ったドリトル先生一行が、さまざまな冒険を経て帰ってくるまでの物語。最大の読み処は、行方不明だった博物学者ロング・アローを発見して救出するところと、漂流するクモサル島の二つの部族の戦争である。前巻に登場したアフリカの王子バンポが再び登場するが、あんまり重要な役割は果たさない。
 困ったときには、動物たちが助けてくれるので、絶体絶命のピンチに追いつめられるということはほとんどない。案外、ドリトル先生を本当に困らせるのは世間のしがらみである。
 「ああ、わしは、王さまなんかひきうけるのではなかった! みすみす一生の好機を見のがすのかなあ」(p.374)。

ヒュー・ロフティング著『ドリトル先生の郵便局』2022年09月09日 21:20

2022年 1月12日読了。
 アフリカのファンティポ王国の郵便局は堕落していたため、ドリトル先生が改良することになる。鳥たちが配達するこの郵便局は世界一速いものになるが、ドリトル先生たちは改良を続ける。船を助けるための海洋気象台を作り、動物たちのために雑誌を作る。
 そして、ドリトル先生はノアの洪水を目撃したというカメから手紙を受け取り、カメに会うために旅に出る。知恵ある巨大なカメというのは『果てしない物語』にも登場した。何か、元型性があるのかもしれない。
 動物たちはみなドリトル先生を尊敬しているから、先生の要求にはノーと言わない。進んで協力する。そのため、先生は少し動物に頼りすぎの印象もある。先生が動物を助ける挿話がもっとあっても良かったかもしれない。

ヒュー・ロフティング著『ドリトル先生のサーカス』2022年09月10日 22:01

2022年 1月19日読了。
 またもや一文無しとなったドリトル先生は、心ならずもサーカス団の一員となる。第一部から第三部は、人間に捕まって夫と生き別れになったオットセイを海へ逃がそうとする冒険物語。第四部と第五部は、ドリトル先生の演出で、動物たちが素晴らしい芸をして大成功をしたのも束の間、サーカス団長が売り上げを持ち逃げして文無しに逆戻りする話。
 動物たちが皆愛らしい。とくに家政婦アヒルのダブダブが健気である。これまでの巻では、食べ物に卑しいあまりトラブルの元になってばかりいた豚のガブガブだが、今回は終盤のサーカスの出し物である動物劇で、俳優として大活躍する。出番は少ないが、会計フクロのトートーが、サーカスの出し物の案内板を差し替える場面は美しく印象に残る。
 特に前半は冒険劇だから、次々に危機が訪れるが、一つ一つの困難はすぐに解決されてしまい、全体的な構築性は低い。まあ、これは子供の緊張感の持続時間の短さに合わせてあるのだろう。
 イメージ的には、動物たちによって演じられる演劇が楽しく、滑稽でもあり妙に美しくもある。いつもはアヒル特有のよたよたした歩き方をしているダブダブが意外な名ダンサーぶりを発揮するのも楽しいところである。

大森望編『NOVA2021年夏号』2022年09月11日 21:45

2022年 1月24日読了。
 書き下ろしSFアンソロジー。
 柞刈湯葉「ルナティック・オン・ザ・ヒル」は、月面上の戦争を描く。補給の途絶えた前線に取り残された二人の兵士は、なすすべもなく眼前で展開する殺し合いを眺めている。刻々と減っていく酸素量を確かめながら、言葉だけを追えば緊張感のない馬鹿馬鹿しい会話を繰り返す。二人の心を徐々に狂気が蝕み始める。
 坂永雄一「無脊椎動物の想像力と創造性について」では、遺伝子を操作された蜘蛛によって、京都の街が巣に覆いつくされ、ついに焼却が決定される。しかし、時期遅く、蜘蛛たちは京都の外へ拡散しようとしていた。建築家が夢想する稀有壮大な蜘蛛との共生文明は面白いが、少し詰め込みすぎではなかろうか。長編にしたら面白そうな。
 斧田小夜「おまえの知らなかった頃」も、長編にしたら面白いと思った。主人公の天才女性プログラマーが何を考えているのか読者にも判らない処が、苛立たしくも面白かった。