『J・G・バラード短編全集4下り坂レースにみたてたジョン・フィッジェラルド・ケネディ暗殺事件』 ― 2021年05月01日 21:31
18年 7月10日読了。
一九六六から七七年に発表された短編を収録。内宇宙、倦怠、死ときて、今回は滅びが目立つ。外宇宙よりも内宇宙に可能性は開ける、というのがバラードの(表面的な)主張であるが、衰退や行き詰まりを描いた作品が多い。
「宇宙時代は始まる前に終わった」とバラードは言ったそうだが、内宇宙時代は始まったのであろうか。カフカのような「閉塞のカタルシス(或いはクライシス)」はなく、『高丘親王航海記』のような「熟れた死の甘美さ」もなく、ただ曖昧に衰退が進んでいく。
相変わらず、砂漠と廃墟のイメージも現われるが、飛行機が頻繁に登場するように成る。精神分析的に何の象徴だとは言わないが、上昇のイメージは爽快だが突破には繋がらないのである。滅びが避けられない事は判っているが、エネルギーを持て余していて受け入れられない、そんな感じ。
読みにくい文章も相変わらず。訳者が悪いのではない。誰が訳しても読みにくいからである。判らない言葉はないのに何が書いてあるのか判りにくい。比喩やレトリックの問題でもなく、文章の構造の問題ではなかろうか。主語と述語の対応が判らなかったり。
いやしかし助詞で語句の格が定まる日本語と違って英語には文型という物があり、文の構造が判らないなどという事があるのだろうか。俺の頭が悪いだけの事であろうか。
今回、カバーのイラストが凄く良い。パオロッツィは良く判らなかったのだが、今回のイラストはアールブリュット的な面白さを感じた。
一九六六から七七年に発表された短編を収録。内宇宙、倦怠、死ときて、今回は滅びが目立つ。外宇宙よりも内宇宙に可能性は開ける、というのがバラードの(表面的な)主張であるが、衰退や行き詰まりを描いた作品が多い。
「宇宙時代は始まる前に終わった」とバラードは言ったそうだが、内宇宙時代は始まったのであろうか。カフカのような「閉塞のカタルシス(或いはクライシス)」はなく、『高丘親王航海記』のような「熟れた死の甘美さ」もなく、ただ曖昧に衰退が進んでいく。
相変わらず、砂漠と廃墟のイメージも現われるが、飛行機が頻繁に登場するように成る。精神分析的に何の象徴だとは言わないが、上昇のイメージは爽快だが突破には繋がらないのである。滅びが避けられない事は判っているが、エネルギーを持て余していて受け入れられない、そんな感じ。
読みにくい文章も相変わらず。訳者が悪いのではない。誰が訳しても読みにくいからである。判らない言葉はないのに何が書いてあるのか判りにくい。比喩やレトリックの問題でもなく、文章の構造の問題ではなかろうか。主語と述語の対応が判らなかったり。
いやしかし助詞で語句の格が定まる日本語と違って英語には文型という物があり、文の構造が判らないなどという事があるのだろうか。俺の頭が悪いだけの事であろうか。
今回、カバーのイラストが凄く良い。パオロッツィは良く判らなかったのだが、今回のイラストはアールブリュット的な面白さを感じた。
『J・G・バラード短編全集5近未来の神話』 ― 2021年05月02日 22:32
18年 7月13日読了。
一九七七から一九九六年に発表された作品を収録。全体に読み易く成った。文章が変わったのか俺が慣れたのか。まあ両方であろう。判り易く成った分、謎めいた感じは目減りした。著者の年齢のせいか、初期のひりひりした「切実さ」も薄れ、頭で拵えたような感じもある。必ずしも悪い事ではないが、ある面の魅力が薄れた事も事実であろう。
相変わらず、廃墟と成ったリゾート、砂漠、ぎすぎすした夫婦関係、宇宙からの帰還などが繰り返し描かれる一方、「交戦圏」「戦争熱」では、戦争という主題が扱われている。
「太陽からの知らせ」「宇宙時代の記憶」「近未来の神話」は同じ主題の変奏で、時間感覚の変容の描写という困難な事に挑戦している。面白いのは、その変化は宇宙へ行く事で齎されるのだが、実現されるのは地上なのである。拡張されるべきは空間ではなく時間であるという著者の直感であろうか。
もう一つ興味深いのは、飛行機がその変容への抵抗として描かれている事である。空間に依る時間への抵抗。
一九七七から一九九六年に発表された作品を収録。全体に読み易く成った。文章が変わったのか俺が慣れたのか。まあ両方であろう。判り易く成った分、謎めいた感じは目減りした。著者の年齢のせいか、初期のひりひりした「切実さ」も薄れ、頭で拵えたような感じもある。必ずしも悪い事ではないが、ある面の魅力が薄れた事も事実であろう。
相変わらず、廃墟と成ったリゾート、砂漠、ぎすぎすした夫婦関係、宇宙からの帰還などが繰り返し描かれる一方、「交戦圏」「戦争熱」では、戦争という主題が扱われている。
「太陽からの知らせ」「宇宙時代の記憶」「近未来の神話」は同じ主題の変奏で、時間感覚の変容の描写という困難な事に挑戦している。面白いのは、その変化は宇宙へ行く事で齎されるのだが、実現されるのは地上なのである。拡張されるべきは空間ではなく時間であるという著者の直感であろうか。
もう一つ興味深いのは、飛行機がその変容への抵抗として描かれている事である。空間に依る時間への抵抗。
ジョナサン・スウィフト著『ガリヴァー旅行記』上下 ― 2021年05月03日 21:57
18年 7月15日読了。
福音館文庫の完訳版。一八世紀前半の風刺文学なのに古く成っていないという事は、人間の愚かさの質が変わっていないという事か。とほほ。児童文学としては省略されてしまう事が多い後半の方が、諷刺としては強烈である。巨人国から帰って来た主人公が、上を見上げてやたらと大きな声で喋ったり、馬の国から帰った時にはすっかり人間嫌いに成っていたりという、人間の認識の変わり易さを描いている点は注目に値する。
福音館文庫の完訳版。一八世紀前半の風刺文学なのに古く成っていないという事は、人間の愚かさの質が変わっていないという事か。とほほ。児童文学としては省略されてしまう事が多い後半の方が、諷刺としては強烈である。巨人国から帰って来た主人公が、上を見上げてやたらと大きな声で喋ったり、馬の国から帰った時にはすっかり人間嫌いに成っていたりという、人間の認識の変わり易さを描いている点は注目に値する。
エリザベス・ベア著『スチーム・ガール』 ― 2021年05月04日 22:16
18年 7月18日読了。
西部劇+スチームパンクという着想は悪くないし、西部劇の部分も面白いのだが、スチームパンクが利いてない。ガンマンと蒸気駆動機械の組合わせは、巧く描けば面白い絵になっただろうに。『戦国自衛隊』を読んでいないのであろう。
西部劇+スチームパンクという着想は悪くないし、西部劇の部分も面白いのだが、スチームパンクが利いてない。ガンマンと蒸気駆動機械の組合わせは、巧く描けば面白い絵になっただろうに。『戦国自衛隊』を読んでいないのであろう。
『伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ』 ― 2021年05月06日 20:48
18年 7月21日読了。
伊藤典夫翻訳短編のアンソロジー。本国での発表が四〇~五〇年代、翻訳が六〇~七〇年代の作品。緯度に依って時間の進み方が違う「旅人の憩い」も面白いが、表題作が一番好き。超能力や超技術を使うのではなく、ある種の「幾何学」を理解する事に依って、時空を超えるという話。ユークリッド幾何学が身についてしまった大人には理解できない。子供達が愛らしい。考え方を変える事で見えなかった物が見えて来る、という話は妙に好きだ。
伊藤典夫翻訳短編のアンソロジー。本国での発表が四〇~五〇年代、翻訳が六〇~七〇年代の作品。緯度に依って時間の進み方が違う「旅人の憩い」も面白いが、表題作が一番好き。超能力や超技術を使うのではなく、ある種の「幾何学」を理解する事に依って、時空を超えるという話。ユークリッド幾何学が身についてしまった大人には理解できない。子供達が愛らしい。考え方を変える事で見えなかった物が見えて来る、という話は妙に好きだ。
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