伴名練著『なめらかな世界と、その敵』 ― 2022年03月01日 21:44
20年 7月27日読了。
『SFが読みたい!』で、2019年国内篇一位を獲得した短編集。長所はすごく器用に巧く纏まっている処で、短所はすごく器用に巧く纏まっている処。凄く良くできたプラモデルみたいな感じ。面白いし感心するんだけど、衝撃は少ない。
SFとしては、焦点が世界の方ではなく、個人の方に寄っているのが、弱さに成っている。不思議な世界や出来事が描かれるんだけど、結末は「友達を救う」とか、個人の問題に収束していく。もっと世界の方もたっぷり描いて欲しかった。そういうのは古いSFファンなのかな。まあ、両方やろうとすると散漫な印象に成っちゃう危険はあるけど。
何だか批判的な感想に成ってしまったが、最初に言った通り、すごく巧くて面白い作品集である。俺がそんな事言わなくても、一位なんだから当然だけど。
『SFが読みたい!』で、2019年国内篇一位を獲得した短編集。長所はすごく器用に巧く纏まっている処で、短所はすごく器用に巧く纏まっている処。凄く良くできたプラモデルみたいな感じ。面白いし感心するんだけど、衝撃は少ない。
SFとしては、焦点が世界の方ではなく、個人の方に寄っているのが、弱さに成っている。不思議な世界や出来事が描かれるんだけど、結末は「友達を救う」とか、個人の問題に収束していく。もっと世界の方もたっぷり描いて欲しかった。そういうのは古いSFファンなのかな。まあ、両方やろうとすると散漫な印象に成っちゃう危険はあるけど。
何だか批判的な感想に成ってしまったが、最初に言った通り、すごく巧くて面白い作品集である。俺がそんな事言わなくても、一位なんだから当然だけど。
柴田勝家著『ヒト夜の永い夢』 ― 2022年03月02日 22:01
20年 7月30日読了。
長編。第一部の時代は昭和二年。南方熊楠は超心理学者福来友吉に誘われて、異端の学者文化人が集う昭和考幽学会に参加する。学会では、新たな企画として、自ら考えて人間のように行動する自動人形を作成し、昭和天皇にお披露目することが発案される。自動人形はその名も天皇機関。熊楠発案の粘菌の頭脳を持ち少女の姿をした天皇機関は、しかし、天皇にお披露目することなく炎の中に消える。
第二部は、北一輝が天皇機関を再生し、革命に利用しようとする。熊楠たち、考幽学会はそれを阻止しようとする。第三部は、ついに再生した天皇機関を使って、北一輝は革命を成就しようとする。迎え撃つのは、考幽学会が作りだした粘菌機関「学天則二号」。決戦の舞台は二二六が展開する雪の帝都。
と、筋立ても面白いが、粘菌コンピュータが人間の脳をシミュレートすることで幻覚を見せるとか、因果を超越した天皇機関は多数のの平行宇宙、三千世界を同時に見ているとか、思弁的着想も興味深い。
全体は喜劇調で狂騒的。登場人物が多くガジェットも詰め込まれていて、最近使われない言葉だがワイドスクリーンバロック的。小説全体が、一種の祝祭のように浮かれ騒ぐ。また、自動人形はパンチカードで制御されるなど、スチームパンク的レトロ趣味も奇妙な趣を出している。
そして、綺羅星の如き近代史の有名人たちの活躍。南方熊楠を筆頭に、江戸川乱歩、佐藤春生、北一輝、三島由紀夫の祖母、宮沢賢治、石原莞爾、孫文、そして昭和天皇。全体に『帝都物語』へのリスペクトが感じられる。また、第二部で天皇機関の身体を作るためにバラバラにした人体を集めるところは、フランケンシュタインへのオマージュ。
詰め込み過ぎて散漫と言えば散漫なのだが、それがむしろ祝祭性を盛り立てる感じ。天皇機関は、須佐之男大神の娘、須世理姫を名乗るが、神話論的な展開や思弁をもっと脹らませて欲しかったというのは、贅沢すぎるであろうか。
長編。第一部の時代は昭和二年。南方熊楠は超心理学者福来友吉に誘われて、異端の学者文化人が集う昭和考幽学会に参加する。学会では、新たな企画として、自ら考えて人間のように行動する自動人形を作成し、昭和天皇にお披露目することが発案される。自動人形はその名も天皇機関。熊楠発案の粘菌の頭脳を持ち少女の姿をした天皇機関は、しかし、天皇にお披露目することなく炎の中に消える。
第二部は、北一輝が天皇機関を再生し、革命に利用しようとする。熊楠たち、考幽学会はそれを阻止しようとする。第三部は、ついに再生した天皇機関を使って、北一輝は革命を成就しようとする。迎え撃つのは、考幽学会が作りだした粘菌機関「学天則二号」。決戦の舞台は二二六が展開する雪の帝都。
と、筋立ても面白いが、粘菌コンピュータが人間の脳をシミュレートすることで幻覚を見せるとか、因果を超越した天皇機関は多数のの平行宇宙、三千世界を同時に見ているとか、思弁的着想も興味深い。
全体は喜劇調で狂騒的。登場人物が多くガジェットも詰め込まれていて、最近使われない言葉だがワイドスクリーンバロック的。小説全体が、一種の祝祭のように浮かれ騒ぐ。また、自動人形はパンチカードで制御されるなど、スチームパンク的レトロ趣味も奇妙な趣を出している。
そして、綺羅星の如き近代史の有名人たちの活躍。南方熊楠を筆頭に、江戸川乱歩、佐藤春生、北一輝、三島由紀夫の祖母、宮沢賢治、石原莞爾、孫文、そして昭和天皇。全体に『帝都物語』へのリスペクトが感じられる。また、第二部で天皇機関の身体を作るためにバラバラにした人体を集めるところは、フランケンシュタインへのオマージュ。
詰め込み過ぎて散漫と言えば散漫なのだが、それがむしろ祝祭性を盛り立てる感じ。天皇機関は、須佐之男大神の娘、須世理姫を名乗るが、神話論的な展開や思弁をもっと脹らませて欲しかったというのは、贅沢すぎるであろうか。
ルシア・ベルリン著『掃除婦のための手引書』 ― 2022年03月04日 22:23
20年 8月 1日読了。
短編集。自分の経験を題材に取った、日本で言えば私小説。孤独や死やアルコール中毒を扱った、主題的には暗い話が多いのだが、奇妙にユーモラスでもある。出来事から距離を置いて客観的に書いている、というだけでもない。自虐的なのだが、意地悪く自分を攻撃するというよりも、冷たく突き放すような感じ。面白い距離感である。
幼少期から、北米大陸を流浪し、三回の結婚と離婚をし、四人の子供を育てながら、多くの職を転々とし、アルコール中毒に苦しんだ。波乱万丈の人生である。このため精神の不安定な主人公も魅力的だが、母親が面白い。母親も極端な豊かさと貧しさを経験した歪んだ精神の持ち主で、主人公と妹を虐待する。冷酷な母親なのだが、奇妙なユーモア感覚がある。
「ママ、あなたはどこにいても、誰にでも、何にでも、醜さと悪を見いだした。狂っていたの、それとも見えすぎていた? どちらにしても、あなたみたいになるのは耐えられない。わたしはいま恐れている……だんだん美しいものや正しいものを感じられなくなっていくようで」(p.175「苦しみの殿堂」)。
「町からの帰り道、あなたは無知で野暮なフィンランド人どもを家に着くまでこき下ろしつづけた」(p.176 同)。
「母は変なことを考える人だった。人間の膝が逆向きに曲がったら、椅子ってどんな形になるかしら。もしイエス・キリストが電気椅子にかけられてたら? そしたらみんな、十字架のかわりに椅子で鎖を首から下げて歩きまわるんでしょうね」(p.202 「ママ」)。
「ママは“愛”って言葉が大嫌いだった。ふつうの人“淫売”って言うみたいにその言葉を言ってたわ」(p.203 同)。
短編集。自分の経験を題材に取った、日本で言えば私小説。孤独や死やアルコール中毒を扱った、主題的には暗い話が多いのだが、奇妙にユーモラスでもある。出来事から距離を置いて客観的に書いている、というだけでもない。自虐的なのだが、意地悪く自分を攻撃するというよりも、冷たく突き放すような感じ。面白い距離感である。
幼少期から、北米大陸を流浪し、三回の結婚と離婚をし、四人の子供を育てながら、多くの職を転々とし、アルコール中毒に苦しんだ。波乱万丈の人生である。このため精神の不安定な主人公も魅力的だが、母親が面白い。母親も極端な豊かさと貧しさを経験した歪んだ精神の持ち主で、主人公と妹を虐待する。冷酷な母親なのだが、奇妙なユーモア感覚がある。
「ママ、あなたはどこにいても、誰にでも、何にでも、醜さと悪を見いだした。狂っていたの、それとも見えすぎていた? どちらにしても、あなたみたいになるのは耐えられない。わたしはいま恐れている……だんだん美しいものや正しいものを感じられなくなっていくようで」(p.175「苦しみの殿堂」)。
「町からの帰り道、あなたは無知で野暮なフィンランド人どもを家に着くまでこき下ろしつづけた」(p.176 同)。
「母は変なことを考える人だった。人間の膝が逆向きに曲がったら、椅子ってどんな形になるかしら。もしイエス・キリストが電気椅子にかけられてたら? そしたらみんな、十字架のかわりに椅子で鎖を首から下げて歩きまわるんでしょうね」(p.202 「ママ」)。
「ママは“愛”って言葉が大嫌いだった。ふつうの人“淫売”って言うみたいにその言葉を言ってたわ」(p.203 同)。
納富信留他編『世界哲学史2--古代2世界哲学の成立と展開』 ― 2022年03月05日 21:40
20年 8月 4日読了。
古代の後半。ヨーロッパにおいてはなんといってもキリスト教の登場がエポック。アジアにおいては仏教特に大乗仏教の登場と広まり。それぞれ、キリスト教とギリシア哲学、仏教と儒教の葛藤が生ずる。
本書の言葉で言えば「流行らなかった哲学」であるゾロアスター教とマニ教が取り上げられているのが、世界哲学ならでは。
世界哲学に関しては、「翻訳」を「受容という創造的営み」として重要視しているのが興味深い。大乗仏教の発生について、教団よりも先にテクストが誕生したという推測も面白い。
古代の後半。ヨーロッパにおいてはなんといってもキリスト教の登場がエポック。アジアにおいては仏教特に大乗仏教の登場と広まり。それぞれ、キリスト教とギリシア哲学、仏教と儒教の葛藤が生ずる。
本書の言葉で言えば「流行らなかった哲学」であるゾロアスター教とマニ教が取り上げられているのが、世界哲学ならでは。
世界哲学に関しては、「翻訳」を「受容という創造的営み」として重要視しているのが興味深い。大乗仏教の発生について、教団よりも先にテクストが誕生したという推測も面白い。
納富信留他編『世界哲学史3--中世1超越と普遍に向けて』 ― 2022年03月06日 22:13
20年 8月 6日読了。
いよいよイスラームが登場する。また、日本の空海にも一章が費やされる。面白かったのはインドの哲学で、近現代の存在論や認識論に通ずるところもある。もちろん宗教性など、異なる部分もあり、早期に出会っていればお互いに刺激し合ったであろうと想像される。
いよいよイスラームが登場する。また、日本の空海にも一章が費やされる。面白かったのはインドの哲学で、近現代の存在論や認識論に通ずるところもある。もちろん宗教性など、異なる部分もあり、早期に出会っていればお互いに刺激し合ったであろうと想像される。
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