河合隼雄編『無意識の世界』2020年09月01日 17:57

16年10月 2日読了。
 無意識についての一般向け解説書。網羅的だが、複数著者に依るので、全体的な流れが弱く、断片的な印象。
 「人間が自分自身のことを了解する、と述べたが、それは知的にのみならず感情的にもなされるべきで、「全人的」な体験として、そのことがなされるほど有効になる」(p.6)。

安野光雅 河合隼雄著『生きることはすごいこと』2020年09月02日 22:30

16年10月 5日読了。
 対談。
 河合「ぼくはよう言っているんですよ、女性の怒りはイザナミ以来のやつだから、個人の怒りを超えるんだって」(p.29)。
 安野「生き方は医者がやればいい、でも死に方の研究は、といっても方法手段ではなくて哲学的な武装ですが、これは自分でやらなきゃしようがない」(p.31)。
 河合「そのバランスがすごくむずかしいんです。有名になりたくないほうにちょっとかたよった人が一番うるさい。『おれは有名になりたくない』とわざわざ言うんだ。なりたくなかったら、黙っておったらいいのに。それで、他人がちょっとなにかすると、『あいつは有名になりたがって、あんなことをしている』とか、いちいちケチをつける。それくらいなら、自分が有名になればいいのにと思うんだけど」(p.160)。読

澁澤龍彦・吉田健一・花田清輝・幸田露伴 著『新編 日本幻想文学集成2』2020年09月03日 18:57

16年10月 6日読了。
 澁澤龍彦「護法」「鳥と少女」の酷薄さと言うか人の命の軽さが心地好い。「空飛ぶ大納言」の神秘の軽さ、「女体消滅」「犬狼都市」の扇情性のない透明なエロチシズムに通じる物かも知れぬ。
 吉田健一「饗宴」「邯鄲」の飲食に関する妄想力の素晴らしさ。この馬鹿馬鹿しい事を延々と思い描き書き連ねる持続力が、「沼」「時間」に於ける粘着質の思弁的叙述に繋がるのであろうか。
 花田清輝は「球面三角」「楕円幻想」など題名がいきなり幾何学。絵画論もあり、視覚的作家かと思えば、奇妙に抽象的でもある。具象を極めようとすると存在論に行き付いてしまうのであろうか。
 幸田露伴は文章の濃密さに引き摺り回される感じ。「雪たゝき」「土偶木偶」はある程度一貫性があるが、「望樹記」「新浦島」などは途中から雰囲気が変わってしまって、統一感がないが、それが奇妙に面白くもある。ここには収録されていないが、やはり名作「観画談」の印象が強い。

谷甲州著『航空宇宙軍史・完全版1 カリスト-開戦前夜-/タナトス戦闘団』2020年09月04日 22:41

16年10月 8日読了。
 第一次外惑星動乱までを描く二長編を収録。時代は二十一世紀末だが、現代から隔絶した超技術などは登場せず、基本的な科学技術は全て現在の延長線上にある。その設定で構築される様々な兵器と、それを用いた戦略戦術が醍醐味の一つと成る。
 戦争の原因は経済つまり資源やエネルギーの奪い合いと、支配被支配の権力関係という相も変わらぬ物だが、百年やそこらで人間は変わらないという著者の考えであろう。登場人物達の性格や考えも現代人と変わらず感情移入し易い。主要な登場人物であるダンテ隊長率いるタナトス戦闘団などは寧ろ野蛮人である。
 大人も子供も男は戦争が好きだ。大いに虚構で楽しむべきであろう。そして、その馬鹿馬鹿しさを知れば良い。悲惨さ云々以前に、奪い合うより与え合う方が豊かに成るに決まっている。

河合隼雄編『「個人」の探究 日本文化の中で』2020年09月05日 21:23

16年10月10日読了。
 日本文化と個人に関する論文集。このように言うと、所謂、日本人の集団主義と西欧的な個人主義の葛藤、というような主題を思い浮かべがちだが、「武士道における個人」や「考古学から見る装いと個人」など、面白い視点の論文も多い。
 柳田邦男は、第二次大戦でもバブル崩壊でも、日本の失敗の形式は同じだという。「日本人は危機状態に陥ったときに、それにどう対処すべきかについて明確な判断を下し、その責任をとる個人が存在せず、集団による、責任の不明確な傾向に従って行動して失敗する。そして、そのときに失敗をしても、その失敗の原因を究明し、責任者を明らかにしないので、同様のパターンを何度も繰り返す」(p.4)。
 河合隼雄「私のアメリカ人の友人は、つぎのようにいったことがある。『日本人は、マラソンで言えば、一位の者がどんなに走っても二位につけてくる力があったが、勢い余って自分が一位になった途端に、コースがわからなくなって混乱してしまった』」(p.6)。
 白幡洋三郎「自己実現とは、個人の『突出』だけではない。集団との『同化』においても自己が実現されるとの了解が日本にはあったとみてよいだろう」(p.97)。