アンジェラ・カーター著『新しきイヴの受難』2021年11月30日 21:32

19年12月 1日読了。
 合衆国で、人種差別や貧富の差を元にした内紛が勃発。本人の意に反して男から女へと肉体改造された主人公は、崩壊する合衆国の辺境を彷徨う。こう書くと現代的な主題だが、発表されたのは一九七七年である。小説の評価ではしばしば「先見性」というような事が言われるが、小説は占いではないので、当たったかどうかは必ずしも重要ではない。むしろ、合衆国では四十年経っても同じ問題を抱えている事の方が問題であろう。
 ジェンダーとセックスの問題を中心に合衆国の矛盾を描いているわけだが、エログロの割に陰惨にならないのは語り口がユーモラスだからであろう。筋立ては、偶然の要素も多く、かなり無理があるが、そういう事に目くじら立てる種類の小説ではない。
 砂漠に展開する神話的イメージの積み重ねが読み処。砂漠に、超科学技術を駆使した地下世界があり、そこを支配しているのはアマゾネスのような女性の集団である。その指導者である〈マザー〉は、世界崩壊後の新たな創世のために、主人公を男から女へと改造するのである。マザーの支配を逃れるため、主人公は地下施設を脱出し、砂漠を彷徨う冒険の旅に出掛ける。
 主人公は、大学講師に成る予定で英国から渡米した男(途中から女)で、身勝手な性格ながら知的な処があり、暴力の支配するグロテスクな砂漠の世界で、時々奇妙な思弁的独白を挟み込む。これが効いてない。これが作品の神話性を増幅する方向に作用すると、ずいぶん面白い小説になったであろう。
 フェミニズムという主題を余り強調せずに、神話的なイメージの暴走に身を任せた方が良かった感じ。結末近くの「時間を逆行する胎内巡り」のイメージはちょっと面白かった。

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