松樹凛著『射手座の香る夏』 ― 2025年04月18日 22:20
中短編集。四編収録。
一番面白かったのは「さよなら、スチールヘッド」。二つの物語が交互に語られる形式。ひとつは仮想空間の物語で、不調の人工知能が療養を行う常夏の(仮想の)森が舞台。キャンプと呼ばれている。この物語の主人公は江戸という少年の姿をした人工知能で、嘔吐感など存在しないはずの肉体感覚に悩まされている。もう一つの物語は、ゾンビが跋扈する文明が滅びた世界。ゾンビに噛まれるとその人間もゾンビになるという典型的設定。ネタバレだが、ゾンビを感染させるのが細菌やウィルスではなくナノマシンだというのがちょっと面白かった。こちらの主人公はエマという女性で、ゾンビを倒しながら生き延びるための旅をしている。
どちらの物語も丁寧に描写されてはいるが筋立ては典型的で新味はない。面白いのは二つの物語の関係である。まずエド、エマの他にも両方の物語に共通の名前を持つ人物が登場することである。人物と言っても人工知能や猫も混じるが。そして、エドはエマの世界を、エマはエドの世界を夢に見る。相互に夢見合っているのである。どちらが現実なのか。それとも両方とも夢なのか。両者の関係はどうなっているのか、というのが読みどころとなる。
「十五までは神のうち」の中核着想である「ごく限られた範囲だけのタイムマシン」も面白かった。これを使うと過去に遡って中絶できる。この技術で、日本をはじめ先進国の多くでは「子どもが自分で自分が生まれるかどうかを選択できる」法律があるのだ。つまり十五歳になった子供は、過去に遡って自分を中絶できる。いなかったことにできるのである。思考実験として非常に面白い。
一番面白かったのは「さよなら、スチールヘッド」。二つの物語が交互に語られる形式。ひとつは仮想空間の物語で、不調の人工知能が療養を行う常夏の(仮想の)森が舞台。キャンプと呼ばれている。この物語の主人公は江戸という少年の姿をした人工知能で、嘔吐感など存在しないはずの肉体感覚に悩まされている。もう一つの物語は、ゾンビが跋扈する文明が滅びた世界。ゾンビに噛まれるとその人間もゾンビになるという典型的設定。ネタバレだが、ゾンビを感染させるのが細菌やウィルスではなくナノマシンだというのがちょっと面白かった。こちらの主人公はエマという女性で、ゾンビを倒しながら生き延びるための旅をしている。
どちらの物語も丁寧に描写されてはいるが筋立ては典型的で新味はない。面白いのは二つの物語の関係である。まずエド、エマの他にも両方の物語に共通の名前を持つ人物が登場することである。人物と言っても人工知能や猫も混じるが。そして、エドはエマの世界を、エマはエドの世界を夢に見る。相互に夢見合っているのである。どちらが現実なのか。それとも両方とも夢なのか。両者の関係はどうなっているのか、というのが読みどころとなる。
「十五までは神のうち」の中核着想である「ごく限られた範囲だけのタイムマシン」も面白かった。これを使うと過去に遡って中絶できる。この技術で、日本をはじめ先進国の多くでは「子どもが自分で自分が生まれるかどうかを選択できる」法律があるのだ。つまり十五歳になった子供は、過去に遡って自分を中絶できる。いなかったことにできるのである。思考実験として非常に面白い。
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