奥泉光著『石の来歴』2019年07月03日 21:30

14年 7月23日読了。
表題作と「三つ目の鯰」を収録。表題作の主人公はレイテ島の悲惨な戦闘を生き延びた後、趣味と成った鉱物採集に没頭しながら平穏な暮らしに埋没するかと思いきや、二人の息子はそれぞれ無残な死に方をし妻は狂気に捕われる。レイテの戦場と現代が、欠落した記憶を補うようにして時を越えて重なり合う場面が素晴らしい。
「三つ目の鯰」は、主人公の父の死をきっかけにして明確に成る「家」を巡る様々な問題を描く。特に、地方の習俗、例えば家を継ぐ事、言い替えれば家系を絶やさぬ事と、それと表裏の関係にある祖先の眠る墓に自分もいずれは入るという事などと、キリスト教信仰の問題が大きな主題と成る。キリスト教はユダヤ教が引き継いで来た「血筋に基づく習俗」を断ち切る物として誕生したから、地方の習俗とは対立したり矛盾したりする。

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