ケン・リュウ著『宇宙の春』2022年10月09日 22:08

2022年 5月28日読了。
 日本オリジナル短編集。「充実した時間」は、藤井太洋を連想をさせる希望に満ちた結末だが、これは例外で、息苦しいような閉塞的な印象の作品が多い。環境のせいか、著者の性格なのかはわからない。
 「思いと祈り」は、ARなどのデジタル技術が発達した近未来が舞台。銃の乱射事件の犠牲者の遺族が、ネットワークの荒らし(トロール)による誹謗中傷でさらに傷つけられていく話。米国では、中傷記事を規制や処罰するよりも、それらをブロックする方向に力を入れているが、荒らしたちはブロックを破る方法を次々に開発して鼬ごっこになっている。リアルすぎて怖い。
 「歴史を終わらせた男----ドキュメンタリー」も似た趣向で、タイムトラベルによって七三一石井部隊の真実を明らかにしようとした歴史学者が、中国、日本、そして戦後に人体実験のデータを利用した米国のそれぞれから避難され、追い詰められていく。
 いずれも「テクノロジーが社会問題を解決しない話」である。

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