山本弘著『プラスチックの恋人』 ― 2021年10月09日 22:52
19年 6月24日読了。
長編。セックスという、当事者同士の個人的な物でありながら、倫理的な物として社会が口を挟みたがる、この奇妙な行為に、科学技術が新たな形態を持ち込んだとき、どんな事が起こるのかという一種のシミュレーション小説。
人工意識を備えたAIに制御される人間そっくりのロボットに依る性的サービスが提供されている近未来。先進国の中では児童ポルノの規制が緩い日本では、子供の姿をしたセックスロボット「マイナー・オルタ」の利用が始まっていた。これに関して世間では、主に倫理的、犯罪抑止的な観点から、反対派と擁護派の議論と対立が起こっていた。
主人公は駆け出しの若い女性フリージャーナリスト。彼女は雑誌編集者からマイナー・オルタと実際にセックスしてみるという取材を依頼される。たとえロボットであっても子供との性交に抵抗を感じる主人公だったが、取材に意義を感じて引き受ける。最初は取材と割り切っての体験だったが、彼女は忽ちそのマイナー・オルタ、ミーフに夢中になる。
その一方で関連する取材も進め、実際にマイナー・オルタを利用している擁護派や、性的虐待の過去を持つ反対派の「黒マカロン」、ロボットに依る性的サービス施設の経営者などにインタビューする。利用者の中には子供への性的虐待志向を持つ異常性欲者も居たが、黒マカロンや経営者はそういう攻撃性や異常性はなく、主張は異なるが正当化やすり替えで誤魔化そうとしない、フェアな議論をする常識的な人物だった。
主人公は取材を進める中で「疑似的とは言え子供の虐待を可能にするこのサービスへの嫌悪感」と「自分のミーフへの愛」との折り合いが付けられずに宙ぶらりんになる。しかし、黒マカロンの策略で事態は急展開を迎える。
新しい性の形の登場と、社会の反応という面では良く描けていると思うし面白かった。最後のミーフの言葉に反して、人間よりロボットの方が知性としての格が上に感じる結末。
でも、俺の趣味としては読後感がちょっと軽い。例えば、マイナー・オルタとの性交経験は、マイナー・オルタへの愛を深めるだけで、主人公に新たなセックス観や人間観を与えるわけではない。つまり、社会的な問題が中心で、人間にとって性とは何か、という問題には深入りしない。
また「おそらく意識を持っているだろうと思われるのに、その質が違いすぎるために、人間とは相互理解できない異種知性」と共存する事、というSFとして面白い主題もあるのだが、これもあっさり流される。
全般にシリアスに展開するが、これは視点をずらすと大変な喜劇の筈なので、それも描いて欲しかった。無い物ねだりばかりだが、山本弘なら無茶な要望でもあるまい。
ロボットたちはバッテリー駆動なので行動範囲に制限が在るが、ピアノ・ドライブを内蔵すればどこまで行ける、と思った。
長編。セックスという、当事者同士の個人的な物でありながら、倫理的な物として社会が口を挟みたがる、この奇妙な行為に、科学技術が新たな形態を持ち込んだとき、どんな事が起こるのかという一種のシミュレーション小説。
人工意識を備えたAIに制御される人間そっくりのロボットに依る性的サービスが提供されている近未来。先進国の中では児童ポルノの規制が緩い日本では、子供の姿をしたセックスロボット「マイナー・オルタ」の利用が始まっていた。これに関して世間では、主に倫理的、犯罪抑止的な観点から、反対派と擁護派の議論と対立が起こっていた。
主人公は駆け出しの若い女性フリージャーナリスト。彼女は雑誌編集者からマイナー・オルタと実際にセックスしてみるという取材を依頼される。たとえロボットであっても子供との性交に抵抗を感じる主人公だったが、取材に意義を感じて引き受ける。最初は取材と割り切っての体験だったが、彼女は忽ちそのマイナー・オルタ、ミーフに夢中になる。
その一方で関連する取材も進め、実際にマイナー・オルタを利用している擁護派や、性的虐待の過去を持つ反対派の「黒マカロン」、ロボットに依る性的サービス施設の経営者などにインタビューする。利用者の中には子供への性的虐待志向を持つ異常性欲者も居たが、黒マカロンや経営者はそういう攻撃性や異常性はなく、主張は異なるが正当化やすり替えで誤魔化そうとしない、フェアな議論をする常識的な人物だった。
主人公は取材を進める中で「疑似的とは言え子供の虐待を可能にするこのサービスへの嫌悪感」と「自分のミーフへの愛」との折り合いが付けられずに宙ぶらりんになる。しかし、黒マカロンの策略で事態は急展開を迎える。
新しい性の形の登場と、社会の反応という面では良く描けていると思うし面白かった。最後のミーフの言葉に反して、人間よりロボットの方が知性としての格が上に感じる結末。
でも、俺の趣味としては読後感がちょっと軽い。例えば、マイナー・オルタとの性交経験は、マイナー・オルタへの愛を深めるだけで、主人公に新たなセックス観や人間観を与えるわけではない。つまり、社会的な問題が中心で、人間にとって性とは何か、という問題には深入りしない。
また「おそらく意識を持っているだろうと思われるのに、その質が違いすぎるために、人間とは相互理解できない異種知性」と共存する事、というSFとして面白い主題もあるのだが、これもあっさり流される。
全般にシリアスに展開するが、これは視点をずらすと大変な喜劇の筈なので、それも描いて欲しかった。無い物ねだりばかりだが、山本弘なら無茶な要望でもあるまい。
ロボットたちはバッテリー駆動なので行動範囲に制限が在るが、ピアノ・ドライブを内蔵すればどこまで行ける、と思った。
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