スティーヴ・エリクソン著『真夜中に海がやってきた』2021年07月10日 22:14

19年 1月22日読了。
 歌舞伎的な因縁の連鎖が面白かった。主人公と言うか視点人物が次々に入れ替わっていき、それぞれの人生が少しずつ重なり合い、ぶつかり合い、擦れ違っているのだが、その全体像を視野に収めている人物は居らず、神の目を持つ語り手と読者だけが彼らの関り合いの網の目の奇妙さが見えている。その事が哀れなようなもどかしいような居心地の悪さを読者に感じさせる。
 登場人物は全員気が狂っている。キーワードは「アポカリプス」「ミレニアム」「夢の消失」「未来の記憶」そして「カオス」。
 カレンダーの再構成によって世界を再構築しようとする男と、地図の再構成によって同じことをしようとする男が登場する。
 この作品は一九九九年に発表されており、新たな千年紀の新たな黙示録というのが一つの主題に成っているが、現実の新千年紀は、例の事件で幕を開けた。小説は崩壊の予感を描いたが、現実に起こったのは物理的な崩壊だった訳である。現在は旧世界と新世界の間のカオスの時代なのであろう。
 小説の最初と終わりに東京が出て来るが、これが完全な作者の創造による架空の都市である。東京都民は皆手の甲に断片的な地図が描かれていて、一千五百万人の都民の手の甲を合わせないと地図が完成しない、という設定の奇怪さ。
 東京には「記憶」が不足しているらしく、密輸入されたタイムカプセルが取引され、記憶を聞き記憶を語る「メモリーガール」という奇妙な職業が存在している。
 時間と空間のカオス。

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