アーサー・ランサム著『シロクマ号となぞの鳥』上下2021年04月07日 21:59

18年 5月15日読了。
 シリーズ最終巻。著者は続編を構想していたらしい。今回も環境保護的な主題で、船の博物学者ディックが大活躍するが、本人達は環境保護に無関心であるにも拘らず、ロジャとナンシイも活躍する。どうも著者はこの二人が好きらしい。
 スーザンが意識的な分別者の典型とすれば、ロジャとナンシイは無意識的な悪戯者の典型である。俺の贔屓のティティも無意識的だが、その創造力は外へ向かわずに内向するにも拘らず、時々はっとするような洞察力を発揮する。ドロシアも創造的だが、彼女の注意は熱中癖の在る兄への配慮と虚構の構築の二点にのみ集中している。個性的な子供達の中に在って、ジョンとペギィの印象が弱く成ってちょっと可哀想な感じ。
 筋立ては、類型的ではあるが良くできた冒険物語。悪役にもっと魅力が在れば良かったようにも思うが、児童文学では複雑に成り過ぎるか。単純な善でも悪でもないゲール人の存在が面白い。
 また、児童文学にありがちなセンチメンタリズムに陥らず、苦労して守った鳥達が別に感謝して呉れる訳でもない処も良い。自然とはそういう物である。

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