ピーター・ワッツ著『エコープラクシア 反響動作』上下2021年04月08日 21:17

18年 5月20日読了。
 様々な亜人種が出て来る。亜人種というだけである程度思弁的存在だが、どれもが悉く人間とは違う特殊な知性を備えており、だめ押しに地球外知性も登場する。当然、知性とは何かが主題と成る。
 関連して自己同一性や自由意志の問題も語られるが、もう一つの重要な主題は宗教或いは信仰である。ここでは、信仰を科学とは別種の知として考える亜人種がおり、その考えで、行き詰まった科学では到達できなかった新たな知の世界を獲得しているらしい。勿論、ここではベースラインと呼ばれる普通の人間には、それがどんな物か想像するのも困難なのだが、彼らは発明品や未来予測に於いて、実績を上げている。
 それぞれの知性がそれぞれの思惑で動いていて、協力したり敵対したり利用したりし合っていて、誰が何を遣りたいのか良く判らず、ただでさえ話が複雑なのに、文章が独特で全体像が判りにくいが、主人公も良く判っていないらしいので、無理に判ろうとせず、それぞれの知性の特徴など楽しみながら読めば良いのかも知らぬ。
 この作品の宇宙観はデジタル物理学に基づく。つまり、宇宙は超巨大で超複雑な数式のような物で、物理法則は演算規則のような物で、ある状態から次の状態を算出し続けている、というようなイメージである。作者が本当にそう信じているのか、この作品に於ける設定として採用しているのかは知らない。
 その中でネゲントロピー、つまり、生命や知性はどう位置付けられるのか、というのが今ひとつ焦点を結ばなかった。それは主題ではないのか、俺が読めていないのか。ゲーデルなど絡めて考えると面白かろうと思う。宇宙の自己言及性。

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