養老孟司 牧野圭一著『マンガをもっと読みなさい-日本人の脳は素晴らしい』2020年07月06日 22:20

16年 7月11日読了。
 マンガについての対談。
 「日本は、とうの昔にそんなこと(人工妊娠中絶)は自由化しているんです。アメリカでは脳死後の臓器移植が平気で行われています。日本では脳死判定にうるさい。ちょうどひっくり返っているからおもしろい」(p.127)。
 「ロボットを作っている方が、蚊が殺せなくなったといいます。もしも蚊をつくるとしたら、あんな小さな所にセンサーを入れ、モーターを入れ、しかもそれを飛ばして天井にパッと止まらせるなんてとんでもないことだ。蚊がだんだん尊く見えてくる、というようなことをおっしゃっていました」(p.144)。
 「子どもが、教科書とマンガどちらを本気で読んでいるか考えてみてください。そうしたら、実質的に子どもに与える影響はどちらが大きいかわかるでしょう」(p.172)。

トマス・スウェターリッチ著『明日と明日』2020年07月07日 21:59

16年 7月12日読了。
 テロに依りピッツバーグが崩壊した近未来。ピッツバーグを再現した仮想現実空間で、不正なデータの消去を調査していた主人公が、大きな犯罪に巻き込まれていく。
 序盤は恐ろしく退屈。難行苦行で読んだ。設定は面白いが、主人公が関るのは異常性格者に依る猟奇犯罪の一種で、舞台との関りが薄い。つまり事件が「世界」に関ってこないので、欲求不満が溜まる。ただでさえ閉塞的な内容なのに。
 どうも最近の米国小説はどれもこれも閉塞的。カフカ的不条理に昇華されたり、別のイメージと結び付けたりして面白い物もあるが、この作品のように「生」のまま剥き出しにされると辟易する。アメリカの行き詰まり感が出ちゃってるのか知らん。

中川恵一 養老孟司著『自分を生ききる 日本のがん治療と死生観』2020年07月08日 22:29

16年 7月12日読了。
 「見舞いにきた人が『お前、そんなに急かすな』って、死にそうな患者に言われてね。彼自身が、いざ自分が死ぬときに、そうした体験がいかに力になるかっていうことですよ」(p.82)。

ニック・ハーカウェイ著『エンジェルメイカー』2020年07月09日 21:58

16年 7月16日読了。
 冒険活劇。文章が冗長で序盤はもたつく印象。イギリス人が読めば面白いのかも知れないな、と思う。中盤以降は、その冗長さも含めて面白く成る。
 主人公の祖母が開発した「理解機関(アプリヘンション・エンジン)」と名付けられた装置が登場する。大雑把に言うと、人間を賢くする事に依って戦争をなくすための装置、なのだが、欠陥があり、実際には人類を破滅させる。理解機関が悪人の手に渡った事を知った主人公はそれを止めようとする。
 様々な過酷な経験を経て主人公の隠れていた性質が目覚める処が読み処の一つ。装置の効果が現れる前に止められるかが、物語の焦点と成る。寧ろ、装置が作動した処から話を始めて、世界がどのように変わるかという物語にしたら面白かろうとも思った。全然違う話に成っちゃうけど。登場する女性たちが皆逞しくて良い。

ピアース・ブラウン著『レッドライジング 火星の簒奪者』2020年07月10日 22:08

16年 7月18日読了。
 未来の火星が舞台。支配階層と被支配階層の対立。序盤の設定と展開が余りにも陳腐な上に、登場人物にも魅力がなく、期待せずに読み進めたが、中盤以降突然面白く成る。
 最下層の出身である主人公は肉体改造を受け、支配階層に潜入、高い地位に就いて内部から支配者を殲滅すべく、優秀者を選抜する過酷なサバイバルゲームに参加する。繰り返される同盟と裏切り、審判する立場にある者達の不正、権謀術数、戦術戦略など、疾走感があり飽きさせない。また、登場人物達もやや類型的ながら活き活きと描かれる。作者が若いせいか、性の扱いがちょっとナイーブかな、と思う。