ジュディ・バドニッツ著『イースターエッグに降る雪』2020年04月01日 18:35

16年 2月10日読了。
明示はされていないがおそらくは東欧と思われる深い森の中で生まれ、アメリカに渡ったイラーナの戦前戦中戦後に渡る生涯を描く。不思議な事が沢山起るのだが、幻想や不条理は強調されない。マジックリアリズム的手法。
 寧ろ酷く奇妙に感じるのは、イラーナと娘や孫達の心理である。酷く歪み不健全に感じるのに、何故か理解でき共感できる。それぞれに違った世界観を持ち、違う現実を見ている。ここまで来れば「確かな一つの真実てなもなねえんだ」という処まで後一歩なのだが、誰もが他者の現実を受け入れようとはしない。
 「それから、突き破って進むんだよ。だって結局紙に描いた背景なんだからね」(p.414)。

メアリー・ノートン著『床下の小人たち』2020年04月02日 20:48

16年 2月13日読了。
 ジブリのアニメにも成った英国のファンタジー。小人の家族の暮しの細部が面白い。人間の何を小人が何に転用して使っているかが事細かに書かれている。宝石箱の長椅子、マッチ箱の箪笥、壁に掛かっている肖像画は郵便切手である。
 小人達は「人間は自分たちに奉仕するための存在である」という、ある種傲慢な自分中心の世界観を持っているが、それは勿論、キリスト教的な人間中心主義の世界観を批判し、相対化する視点に読者を誘導する。一九五二年の発表だが、欧州の子供向けの本としてはかなり過激だったかも知れない。最後の一行が利いている。

メアリー・ノートン著『野に出た小人たち』2020年04月03日 21:48

16年 2月15日読了。
 小人達の話が始まるまでの導入部が、年老いたトムと幼いケイトの交流が描かれていてなかなか良い。小人達の冒険は一種のサバイバルだが、一見頑に見えるホミリーが奇妙な柔軟さを見せるのが面白い。どうするのが正解という解答が見出せずに、迷いを残したまま終わるのも児童文学らしくなくて面白い。迫りくる冬という問題を解決するのが小人達の努力や知恵ではなく、ある種の偶然であるのは、ちょっとカタルシスが弱いが、努力が報われないのも児童書らしくない。小人達を救う少年は前巻にも出て来たが、二人共、単純に純真で善良な理想化された子供ではなく、子供らしい利己心も持っている処はなかなかリアル。

映画『ソルト』2020年04月04日 21:50

16年 2月15日読了。
 アンジェリーナ・ジョリー主演のスパイアクション。主人公の行動原理が最後に成るまで明かされないので、観客の興味が持続するが、主人公の内面が判らぬ故に感情移入はできない。感情移入し易い視点的人物を一人設定した方が良かったのでは。アクション・デザインはあんまり面白くない。最初の暗殺場面の、床を抜いて標的を落っことす処以外に見るべき物はなかった感じ。

映画『ルーザーズ』2020年04月05日 21:08

16年 2月17日視聴
 元特殊部隊の男達が主人公のアクション映画。登場人物が多いにも拘らず良く描き分けられている。陰謀在り、潜入在り、裏切り在りで退屈させない。アクション・デザインとしては、アクションその物よりも、小道具やトリックなどが工夫されていて面白い。比べちゃ悪いが『ソルト』よりも数段面白かった。