小田雅久仁著『禍』2024年04月29日 21:35

 短編集。多くの作品が、導入部は比較的現実的で、主に報われない人生を送っている人たちの生活が描かれるのだが、徐々に異様な世界に入り込んでいき、ホラー、幻想系の不条理文学に移行する。小説や作家の分類の仕方はさまざまあり、その一つに「視覚系と聴覚系」という分け方がある。しかし、この短編集の作品の幾つかは「触覚系」である。肌に触れる様々なものの質感が詳細に、執拗に描写される。特に、粘りぬめるもの、ぐにゃぐにゃ柔らかいもの、生暖かいもの、チクチクと痒いものなど気持ち悪さ。そして、その気持ち悪いはずのものが気持ちよさに転じる瞬間。

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