N・K・ジェミシン著『オベリスクの門』2024年05月08日 21:41

 『第五の季節』の続編。娘のナッスンの行方を見失ったエッスンは、普通の人間とオロジェンが対等に暮らす共同体カストリマで暮らし始める。エッスンはそこで再会したアラバスターから、数百年周期で繰り返される地殻変動災害<季節>を終わらせる方法を学び始める。そのためには、古代文明によって楕円軌道に弾き飛ばされてしまった<月>をもとの軌道に戻さなければならない。しかし、十分な知識と技術を習得する前にアラバスターは死に、カストリマは侵略者に包囲される。
 一方、エッスンの夫ジージャは、二人の娘ナッスンを連れて、オロジェンである彼女を「普通の人間に治してくれる」場所を目指して旅をしている。ナッスンはそこで、かつてエッスンの守護者であったシャファに出会い、母親譲りの強力なオロジェンの能力を開花させていく。
 この巻では、新たに「魔法」という概念が登場する。オロジェンの能力、オロジェニーが物質や熱に作用するものなら、魔法は非物質的にオロジェニーに作用する。オロジェニーを制御し、統合し、増幅する。魔法はオロジェンには銀の糸のようなものとして知覚(地覚)される。月を軌道に戻すには、世界中のオベリスクを魔法の銀の糸で繋ぎ合わせ、「オベリスクの門」を開くことが必要らしい。
 それに対して不死の存在である石喰いたちは、<季節>を利用して人間たちを滅ぼし石喰いだけの世界を実現しようとするもの、<月>を取り戻して<季節>のない世界を実現しようとするものなど、様々な派閥に分かれて争っているらしい。
 もう一つの読みどころは、ナッスンとジージャの関係の変化である。ナッスンは父に愛してほしいと願い、父も娘を愛したいと思っているのだが、ジージャはオロジェンという存在をどうしても受け入れることができない。やがて決別の時がやってくる。

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