円城塔著『去年、本能寺で』 ― 2025年09月06日 22:13
連作短編集。歴史小説なのだが、実在の武将が実はAIだったり、坂上田村麻呂が黒人でしかもシェイクスピアの黒人将軍オセローの記憶を持っていたりする。歴史改変というのとも違い時空が錯綜し混乱している。特に、歴史上の人物のキャラクター化というか、アニメやゲームで扱われるような虚構的な特徴がつけられているのが目立つ。そして、その虚構化の権化ともいえるのが織田信長であり、最終話「去年、本能寺で」では、虚構化された信長が、今ひとたび血肉を持って復活しようとする。登場人物の多くが事故の実在性に疑い持っている、ある種のメタフィクションでもある。もちろん、円城塔独特のねじれた論理とどこかとぼけた文章は健在である。俺か好きなのは「宣長の仮想都市」である。本居宣長が構築した架空の都市の中で生きる人々を描いている。主人公は世界の虚構性にだんだん気付いていく話である。
アルフレッド・アドラー著『人間の本性』 ― 2025年09月18日 22:49
アドラーによる個人心理学の解説書。
「この本では、個人心理学の揺るぎない基本とはどのようなものか、人間を知ることに対して個人心理学がどれほど有用か、また、他者とつきあい、自分の人生をつくっていく上でどれほど重要かを、できるだけ多くの読者に示そうとしています」(p.226 「謝辞 本書のなりたち」)。
全体に、人間の無意識の志向には「共同体意識」と「支配的な力の追求」があり、後者が強く出過ぎることで多くの問題が起こる、というような趣旨である。今日の日本でも通じる部分は多いが、基本的に二十世紀初頭のオーストリアの社会状況に応じていると思われ、そのまま現代日本に当てはまらない部分も多い。
遺伝的要因を軽視し、幼少年期の体験が性格形成に大きな影響を与えると考えているところが特徴。一章を費やして女性が不当に差別されていることを告発しており、フェミニズムの先駆けとなっているのも興味深い。
「この本では、個人心理学の揺るぎない基本とはどのようなものか、人間を知ることに対して個人心理学がどれほど有用か、また、他者とつきあい、自分の人生をつくっていく上でどれほど重要かを、できるだけ多くの読者に示そうとしています」(p.226 「謝辞 本書のなりたち」)。
全体に、人間の無意識の志向には「共同体意識」と「支配的な力の追求」があり、後者が強く出過ぎることで多くの問題が起こる、というような趣旨である。今日の日本でも通じる部分は多いが、基本的に二十世紀初頭のオーストリアの社会状況に応じていると思われ、そのまま現代日本に当てはまらない部分も多い。
遺伝的要因を軽視し、幼少年期の体験が性格形成に大きな影響を与えると考えているところが特徴。一章を費やして女性が不当に差別されていることを告発しており、フェミニズムの先駆けとなっているのも興味深い。
三宅岳著『山・森林で働く』 ― 2025年09月22日 22:59
ぺりかん社の「なるにはBOOKS」というシリーズの一冊で、林業を中心とした森林の仕事に興味がある若い人向けに書かれたもの。もちろん俺は今から林業をする気はないが、山の仕事の内容と現状が知りたくて手に取った。よくまとまっているだけでなく、具体例が豊富で現実的なので、職業案内としてだけではなく読み物として面白い。東京で若い人が林業会社を起業している話や、自分の所有する山の管理をする「自伐型林家」の話が非常に興味深い。なるにはBOOKSの他の本も読んでみたくなる。
海野和男・写真『昆虫顔面超拡大図鑑』 ― 2025年09月23日 21:57
昆虫の顔面の拡大写真ばかり集めた図鑑。昆虫の面白さはその形態の多様性にある、と俺は思う。ツノゼミなんかデザイナーの気が狂っている。単に変化の幅が広いだけでなく、そこには統一性もある。外骨格で、体が三節に分かれていて、足が六本、羽根が四枚あり、複眼で、触覚が一対ある。昔から図鑑やカタログが大好きだったのだが、統一性を持ちつつ多様な変化のあるものが好きなのであろう。昆虫に限らず生物全般の性質でもあり、工業製品などにもみられるし、もしかすると宇宙全体に普遍的な性質かもしれない。
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