レアード・ハント著『インディアナ、インディアナ』2021年12月12日 22:15

20年 1月16日読了。
 主人公は精神障害のある男性。やはり精神障害のある妻は病院に入れられ、生き別れになっている。二人の愛情が美しい。地の文は三人称だが、主人公の思考を追っているため、文法的にも内容的にも奇妙な文章になっている。それが面白い。ちょっと山下清の句点がなくて「ので、……ので」とどこまでも続く文章を連想する。
 病院や療養所から、妻の手紙が届くのだが、文章ばかりでなく、その妄想のイメージも素晴らしい。これまで読んだレアード・ハントの三冊の長編は、主人公がみな文章を書く教育も訓練も受けていないのだが、その事が、一種無垢な表現を生み出す面白さがある。引き離された主人公と妻の喪失感が痛々しい。
 何とした事か絶版らしいが、『優しい鬼』と『ネバーホーム』が評価されれば復活するであろう。

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