ダリル・グレゴリイ著『迷宮の天使』上下2021年05月07日 21:17

18年 7月24日読了。
 舞台は近未来。十年前に開発された薬「ヌミナス」は、脳神経の配線を再構築する。これを使用した人間は「神」を見るように成るのだ。封印されていた筈のこの薬が再び流通し始めていた。開発に関った女性神経学者は、それを知って追跡を始める。
 主な登場人物が全員、精神に異常を来たしている。主人公の神経学者も、問題の薬の過剰摂取で神の幻覚を見ている。この幻覚のキャラクターが良い。白衣に眼鏡の知的な雰囲気の女性に光の翼を生やした天使の姿で、名前がドクター・グロリア。幻覚なのだが、大変に役に立つ事を言う。ユング的に言えば、老賢者的存在なのであろう。
 役に立つのなら受け入れれば良さそうな物だが、主人公は対立的に振る舞う。幻覚は狂気の象徴だからである。問題の薬の出所を探る形式の冒険活劇に成っているが、主人公と幻覚の神ドクター・グロリアとの葛藤を中心にした方が面白く成ったのではなかろうか。

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