J.M.バリ著『ピーター・パン』2020年05月01日 21:49

16年 4月19日読了。
 不勉強な事に初読。こんなにナンセンスだとは知らなかった。フックが行儀を気にしている処など大笑する。挿し絵も素晴らしい。児童文学らしくない「冷徹さ」のような物が見え隠れするのは、メアリー・ポピンズにも通ずる感じがあり、英国らしさであろうかなどと思う。

ルーマー・ゴッデン著『人形の家』2020年05月02日 21:51

16年 4月19日読了。
 イプセンではない。広田三枝子でもない。岩波少年文庫。これもイギリス作家。人形達が一人一人(?)個性的に描き分けられていて良い。子供達にはあんまり教訓など読み取らずに、人形達の無力さとけなげさを悲しみと共に読み取って欲しい。

養老孟司著『虫の虫』2020年05月03日 21:29

16年 4月21日読了。
 昆虫に纏わる随筆とラオスでの採集記。
 「でも、物理学であろうと、じつは観測者は始めから変数として入っている。論文を書いているのは本人だからである。物理学であろうと、その人の脳を使って書いているという事実から逃れる事はできない。しかも、すべての脳は同じかというなら、そんな保証はない。そこを議論しはじめると、物理学が成り立たない。だから議論しなかったのであろう」(p.29)。
 「思い込みが壊れるのも発見の一つである。発見とはじつは、常に自分に対する発見なのである。思い込みとは、要する『自分の考え』だからである。思い込みが壊れるとは、自分の考えが変わることである。自分の考えが変わるということは、自分が変わる、それまでとは違う自分になる、ということである。極端な場合はそこで『生まれ変る』」(p.131)。
 「完全変態は全く異なる昆虫が、ゲノムを含めて共生した結果ではないかという説がある。ゲノムとゲノムがなにか上手に話し合って、お互いが獲得してきた環境に有利な性質を共有した」(p.152)。
 「自然選択説を含め、法則はその適用を間違えると、役に立たない、ないしは有害なのである」(p.156)。
 「さらにいえば、十九世紀の生物学に独特の三つの法則、メンデルの法則、ダーウィンの自然選択説、ヘッケルの生物発生の基本原則、これらはいずれも情報に関する法則ないし経験則である。私は長年そう思っているし、そうに決まっているのである」(p.157)。

『定本荒巻義雄メタSF全集 第1巻 柔らかい時計』2020年05月04日 20:54

16年 4月22日読了。
 短編六編の他、「大いなる正午」の前駆的作品「しみ」と評論「術の小説論」を併録。やはり「大いなる正午」がイメージ的飛躍が大きくて面白い。「柔らかい時計」と「トロピカル」は、ダリとマグリットのシュルリアリスティックなイメージを小説化した作品。着想は素晴らしいが、まだイメージと小説が乖離している感じ。「緑の太陽」と「大いなる失墜」の時空間的不連続感は面白い。「緑の太陽」はちょっと『トータルリコール』に似ている。全ての作品に横溢する思弁性が心地好い。
 評論「術の小説論」は、倫理と科学の止揚がSFの目的である、という結論らしい。こういう、文学(芸術)の外部に表現の目的がある、という主張には殆ど反射的に反発を覚える。表現の目的は表現自体である。江國香織が言っていたのだが「読者のためでなく編集者のためでなく自分のためでなく、作品のために書く」。両者を止揚する立場も何処かに在りそうな気もするが今の処見出せていない。ユングの集合的無意識など示唆があるかも知れない。

『荒巻義雄メタSF全集第2巻 宇宙25時』2020年05月05日 20:32

16年 4月25日読了。
 短編の他インタビュウなどを収録。「無限への崩壊」の、目を凝らすほどに輪郭がぼやけていく感じが面白い。見極めようとすると、解けていく。「宇宙25時」の目覚めても目覚めても夢の中で現実に辿り着かない感じも良い。