養老孟司・中川恵一著『養老先生、病院へ行く』2022年07月05日 22:04

2021年 7月 2日読了。
 養老孟司が心筋梗塞で東大病院に入院した話題と、彼の愛猫のまるの死について、エッセイとヤマザキマリを加えた鼎談。病院を嫌っていた養老の意識がこの入院で変わったのではないか、と中川が繰り返し疑うのが興味深い。本書を読んだ限りでは、養老の意識はそれほど変わっていない。なんとなく中川に「変わってほしい」という無意識の願望がある感じがする。
 「統計というのは、個々の症例の差異を平均化して、数字として取り出せるところだけに着目してデータ化します。逆にいえば、統計においては、差異は『ないもの』として無視しなければなりません」(p.30)。
 「本来、医療は身体を持った人間をケアし、キュア(治療)する営みです。それなのに、患者の身体がノイズだというのは、おかしなことです」(p.31)。
 「地球規模では人口が増えるのは止まらないですよ。限界がくるまではね。先進国は限界にきているから、減り始めているけど、発展途上国はこれからも増えていくでしょうね」(p.158)。
 「日本は何に対しても自己肯定感が低いですからね。それに地方は経済的にも負けてしまったから、劣等感に輪をかけちゃったんですね」(p.162)。
 ヤマザキマリ「想像力が鍛えられていないのと、思考への怠惰が、今の世の中のさまざまな問題の要因だと私は思います」(p.178)。

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