メアリー・ノートン著『小人たちの新しい家』2020年04月11日 21:05

16年 2月27日読了。
 アリエッティの家族は又しても安住の地を求める旅に出る。新しい家は改築を繰り返したらしい古い牧師館である。この家の構造と、小人達がそこをどのように「改装」して住みやすくしていくかに多くの紙数が費やされる。物語の進展よりも筆に熱が入っている。こういう設定に懲りだすと、楽しくて止まらなく成る気持ちは良く判る。
 牧師館の隣にある教会には、お馴染みのヘンドリアリ一家が移住しているが、一見、すっかり寛容で無欲に成ったように見えるルーピーが、心の奥底では以前と変わっていない処など面白い。
 野生児スピラーは、極端ながら一つの理想として描かれている事は前巻までと変わりないが、人間とその文明への疑いの視線はより強く成っているので、スピラーの反文明性、人間への非依存性はより肯定的な印象に成る。作者八十歳近くの作品だが、この姿勢が単なる年寄の新しい物への反感でなかった事は、現代を生きる我々の良く知る処である。

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