養老孟司著・海野和男写真『虫は人の鏡 擬態の解剖学』2022年08月29日 22:11

2021年12月13日読了。
 昆虫の擬態に関する写真とエッセイ。擬態の問題は、モデルの虫と真似する虫、それと捕食者の関係として考えられることが多いが、養老はそこにそれを定義する「人」を加えて考える。擬態が捕食者の認識に働きかけるものだとすれば、擬態は広い意味で「情報」の問題だと言える。
 「さらに生物には物理化学が扱わない生物独自のなにか=生気があるとする生気論は「否定された」と考えられることが多いが、典型的な生気論者とされるドリーシュ(1867~1941)がその著書で苦労して示そうとしたのは、現代では「情報」とみなされる現象であった、と米本昌平(科学史家1946~)はいう」(「はじめに」p.004)。
 「コンピュータ技術の進展に伴い、情報系は工学系と見なされるようになったが、生物は遺伝子系と神経系という二つの情報系を持っている。こうした複数の情報系どうしの関係といった、擬態を典型とするマクロ的な情報現象の分析は、基本すらまだ成立していない」(「はじめに」p.004)。
 が、まあ、この手の本がしばしばそうであるように、昆虫たちの造形の面白さが全てを圧倒してしまう。デザイナーの気が狂っている。

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