日本SF作家クラブ編『ポストコロナのSF』2022年08月28日 21:11

2021年12月10日読了。
 コロナ禍を経た世界を扱ったSFアンソロジー。社会派の作品も多いが、パンデミックとは何か、人類と感染症の関係といった主題を正面から扱った作品は見当たらない。パンデミック以前から『アンドロメダ病原体』『復活の日』といった作品を擁していたSFというジャンルとしては、それがあってしかるべき、と思わぬでもない。まあ、それを語るには機が熟していないとか、長編でなければ語り切れないとかいう問題もあろう。
 やはりというか、コミュニケーションの問題をあつかったものが多い。その中で特に俺が気に入ったのは、近代西欧型文明には未知のコミュニケーション形式を扱った津原泰水「カタル、ハナル、キユ」と吉上亮「後香(レトロネイザル)」である。いずれも、少数民族の間に伝わる特殊なコミュニケーション形式が主題。
 北野勇作「不要不急の断片」は、著者得意の一〇〇文字小説。その中の一文「坑道はカナリヤの死骸で埋め尽くされている」(p.509)。爆笑した。

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