ウィル・ワイルス著『時間のないホテル』2021年04月21日 22:40

18年 6月 9日読了。
 裏筋には「J・G・バラード+スティーヴン・キング+ラヴクラフト」などとあるが、ホテルから脱出できない処などはカフカ的。或いは筒井康隆「ヒストレスヴィラからの脱出」。違うか。
 序盤は、主人公の現代的な新しい仕事を描いたビジネス小説の趣で、神秘的な事は殆ど起こらない。そして中盤でカフカ的不条理小説に展開するという半村良スタイル。
 終盤、敵が一人の人物に収束して行くのは、エンターテインメント的には正しい展開であろうが、ホテルの歪んだ時空その物を中心に描いた方が広がりが出たのではなかろうか。
 広がりと言えば、主人公がホテルの超時空構造を直感的に理解する、一種の覚醒の場面があるのだが、その認識が一挙に広がる感じをもっと描けたら大きなカタルシスが在っただろうなと思う。難しいのは判っているが。

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