宮内悠介著『暗号の子』 ― 2025年02月05日 22:53
短編集。テクノロジー、特にデジタル通信の問題を扱ったものが中心。表題作は、インターネットの中のささやかな理想郷の誕生と崩壊の物語。あとがきによると、著者はこういう筋立てが好きだそうである。
「すべての記憶を燃やせ」はAIによる執筆だそうだが、そんなこととは無関係に面白かった。あとがきによれば執筆はAIでも、設定やキャラクターを作ったのは人間の著者で(ややこしい)、学習データなども著者が用意したようだ。読んだ人間をおかしくさせる詩、というのが主題。著者(もちろん人間の)は川又千秋の『幻詩狩り』から着想したようだが、俺は飛浩隆の「アリス・ウォン」シリーズを連想した。外部からコンピュータウィルスのように人間の精神に感染する、という意味ではホラーの「リング」シリーズにも似ている。言うまでもないが、先だから偉いとか、真似だから駄目だとかいう話ではない。むしろ、こういう主題の作品が多く書かれ、多様にもなり、深化もしていってほしいものである。
複数の作品で「ブロックチェーンを使った、中心のない総意の決定システム」が登場する。完全に肯定的に描かれているわけではないが、可能性は感じているように見える。
小説中にも「悪」という言葉が出てくるが、あとがきにはよりはっきり「インターネットに悪が潜むこと」(p.279)と書かれている。悪とは何か。小松左京の「ゴルディアスの結び目」や「結晶星団」にも通ずる主題だが、悪(あるいは善)は、人間が生むものなのか、人間がいないところにも普遍的な善悪のようなものはあるのか、進化は善か、物理法則は善か、などという方向に俺の心はさまよいだす。
「すべての記憶を燃やせ」はAIによる執筆だそうだが、そんなこととは無関係に面白かった。あとがきによれば執筆はAIでも、設定やキャラクターを作ったのは人間の著者で(ややこしい)、学習データなども著者が用意したようだ。読んだ人間をおかしくさせる詩、というのが主題。著者(もちろん人間の)は川又千秋の『幻詩狩り』から着想したようだが、俺は飛浩隆の「アリス・ウォン」シリーズを連想した。外部からコンピュータウィルスのように人間の精神に感染する、という意味ではホラーの「リング」シリーズにも似ている。言うまでもないが、先だから偉いとか、真似だから駄目だとかいう話ではない。むしろ、こういう主題の作品が多く書かれ、多様にもなり、深化もしていってほしいものである。
複数の作品で「ブロックチェーンを使った、中心のない総意の決定システム」が登場する。完全に肯定的に描かれているわけではないが、可能性は感じているように見える。
小説中にも「悪」という言葉が出てくるが、あとがきにはよりはっきり「インターネットに悪が潜むこと」(p.279)と書かれている。悪とは何か。小松左京の「ゴルディアスの結び目」や「結晶星団」にも通ずる主題だが、悪(あるいは善)は、人間が生むものなのか、人間がいないところにも普遍的な善悪のようなものはあるのか、進化は善か、物理法則は善か、などという方向に俺の心はさまよいだす。
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