マーサ・ウェルズ著『マーダーボット・ダイアリー ネットワーク・エフェクト』2022年10月16日 23:15

2022年 6月23日読了。
 『マーダーボット・ダイアリー』の続編。メンサー博士の依頼で、惑星探査隊の護衛についた警備ユニットの「弊機」は、メンサー博士の娘とともに謎の敵に拉致される。ここから、未知の異星文明の遺物が絡む冒険が始まるのだが、筋立てを紹介してもあまり意味はない。意外な展開とか、ワンダーなイメージの広がりとかそういうものはないからだ。つまり、筋立て自体には魅力はない。
 突出しているのは登場人物たちの魅力である。最も魅力あるのは、正確に言うと「人物」ではなく二人(二機)の人工知能だが。一人は主人公の、機械と有機組織のハイブリッドである警備ユニットの弊機。もう一人は調査宇宙船ペリヘリオン号の操船用AIで、弊機はARTとあだ名をつけている。これは「不愉快千万な調査船」の略である。
 二人とも本来的には「いい奴」なのだが、どちらも屈折していて素直ではない。そして人間の不合理さにうんざりしている。二人はお互いに好きだし、お互いに信頼し合っているのだが、それを素直に表現することはほとんどない。常に憎まれ口をたたき合っている。このあたりのやり取りの愛らしさは、今風に言えば「やばい」。

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