アンディー・ウィアー著『アルテミス』上下2021年10月22日 21:24

19年 8月 6日読了。
 著者の前著『火星の人』がサバイバル小説だったのに対して、今回は冒険活劇。舞台は未来の月面都市アルテミス。主人公の女性ジャズはアルテミス内の運び屋と同時に密輸を行っている。非合法ながら取引に関しては正直な商売をする事が特徴。大実業家から依頼された危険な仕事をジャズは高額な報酬に惹かれて引き受けるが、それをきっかけに都市の未来を左右する陰謀に巻き込まれていく。
 エンターテインメントとして欠点はなく、良くできているといえるが、それ以上の物はない感じ。少なくとも『火星の人』の、極限状況でのサバイバルという緊迫感と主人公のユーモア感覚が生み出した独自の感動のような物はない。登場人物はそれぞれに魅力的なのだろうと思わせるが、それが充分に活かされていない処が惜しい。特に、主人公のアルテミスに対する愛情が前半で充分に描写されていれば、後半の都市のために奔走する姿がより感動的になったであろう。
 主人公の友達のマッド(おたく)サイエンティストの男が良い奴で、読んでいて嬉しくなる。反撃に転じた主人公がチームを招集してからの疾走感はなかなか痛快である。次回作に期待。

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