ピーター・トライアス著『メカ・サムライ・エンパイア』上下2021年10月16日 22:09

19年 7月19日読了。
 『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』の続編。前巻は文化論的な部分も多いディストピア的な作品だったが、今回はロボット・アクション満載でよりエンターテインメント的な作りである。
 第二次大戦で同盟国が勝利した世界、米国は大日本帝国とナチスドイツに分割統治されている。その領地の問題もあり、ナチスが本来民族主義であるという問題もあって、嘗ての同盟国は対立を深めている。
 日本が開発した巨大人型兵器「メカ」に対して、ナチスは生体組織由来の「バイオメカ」を開発して対抗している。これに加えて、アメリカ再独立を目指すテロ組織が日独に攻撃を仕掛けている。ナチスは密かにというか半ば公然と日本を攻撃するテロ組織を支援している。明確には描かれないが、ドイツ領側で日本も似た事をしているだろうという事は何となく予想が着くように描かれている。
 主人公の誠は、戦後生まれで、皇国が米国を支配している事に何の疑問も持っていない。誠は皇軍のメカパイロットを目指す少年で、彼の成長を描くのが主筋である。基本的な構成は、米国SFに多い馬鹿マッチョミリタリー。言ってみれば「軍国少年」であった誠が、少しずつ皇国や皇軍に疑問を持ち始める、という展開に成っている。堺三保の解説にも在るが、支配者である独裁国側の視点で描かれているのが、ディストピア小説としては珍しい。
 ジャパニメーションへのオマージュである「電磁ヨーヨー」だの「ロンギヌス攻撃」だのが馬鹿マッチョストーリーをさらに安っぽく盛り上げているが、そういうのが嫌いな人は表紙を見た時点で読まないから大丈夫だ。キリスト教は神道に習合されている。いいぞ。ガジェット満載の楽しいエンターテインメント。

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