山折哲雄著『神秘体験』2021年04月12日 22:40

18年 5月29日読了。
 講談社現代新書。神秘体験とはどのような物か、という網羅的な考察。酸欠や不眠、飢餓、臨死体験、はたまた音楽や幻覚剤などによる幻覚が、死生観や宗教的な物に結び付く感覚について。そして、本来個人的な物であるそのような体験が、組織化され一般化されていく過程が、著者自身の体験も交えた様々な資料から体系化される。最後に、東西の戦没者の手記の比較、三島の自死についての分析などから、日本人独自の死生観を考える。
 「肉体の生理を極限まで混乱におとしいれることによって、超自然的なサインを受けとろうとする信念」(p.25)。
 「思うに、生理の過度の禁圧は法悦と苦痛、光明と暗黒を交互にひきおこす誘因となるのであろう。それは一瞬のうちに天国と地獄のイメージをあふれさせ、死とエロスの両義的な情感を増幅させるといってもいい」(p.26)。
 「『神話』の源泉は、手のとどかないような、たんなる非現実界のかなたにかすむように漂っているのではない。それは現実界の臨死者の意識下にも、格納されていたのである」(p.46)。
 「そういうさまざまの神秘体験が、やがて一つの思想的な流れとなり、理論化されるようになった。神秘体験が人間存在にとって価値あるものとして、哲学的、神学的に意味づけようとする試みがおこなわれるようになったのである。神秘体験が思想的なことばで語られるようになったのだといってもよい」(p.48)。

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