ジョー・ウォルトン著『わたしの本当の子どもたち』2021年04月09日 21:17

18年 5月23日読了。
 長編。二つの異なる人生、異なる史実の記憶を持つ老女の物語。平行宇宙SFとも認知症患者の妄想とも読める。記憶の二重性と事実か妄想かの二重性が重なり合っている訳である。同じ作者の『図書室の魔法』もファンタジイとも妄想とも読める構造に成っていたから好きなのであろう。俺も好きだが。
 第二次大戦中から現在まで、主人公の二通りの人生のそれぞれが、我々の知っている史実とは違う歴史改変物語に成っているが、焦点はそこにはなく、一人の女性の人生がそれぞれに魅力的に描かれている。
 SF的な要素よりもフェミニズムの主題が強い感じで、女性や同性愛者の抑圧が丁寧に扱われる。その意味では朝ドラ的。朝ドラでSFは無理だろうが。監督二人使ってドラマにしたら面白いのでは。
 派生的な事だが、認知症に成った主人公の記憶力をネットやコンピュータで補助する処が面白い。もっと老人向けのアプリを作らなくちゃいけないし、それは日本の役目である。個人的には、老いる事が否定的にばかり描かれるのがちょっと嫌。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://castela.asablo.jp/blog/2021/04/09/9365650/tb