山田正紀著『ここから先は何もない』2021年03月28日 21:24

18年 4月10日読了。
 長編。山田正紀がこの種の主題を扱うのは久し振りなのではなかろうか。昔は「神」と言えば山田正紀の専売特許だった物だが。この手のSFを読んで何時も少し不満に思う事は、エヴァンゲリオンもそうなんだけど、神のイメージがキリスト教に偏っている事である。
 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は砂漠の宗教で、宗教としては寧ろ特殊な物である。種としての人類を考えるなら、もっと多様な宗教の神を扱うべきではなかろうか。アニミズムの方が普遍性高いような気がする。光瀬龍は既に仏教入れてた訳だし。
 それから、人類のあらゆる文化で、宗教に似た物がない文化というのは存在しない訳で、人間は信仰を持たざるを得ない性質があるらしい。そこら辺に、何か秘密と言うかネタが在りそうな気がする。柳澤桂子は「脳には祈る部位が在る筈だ」と言っていた。
 さて、この作品は、形式としてはミステリ或いは潜入系の冒険小説として展開し、やがて神の存在に近付くという構成に成っている。主題の壮大さに比べると、読後感はちょっと軽い感じ。この軽さを好ましいと感じるか物足りぬと感じるかは意見の分かれる処であろう。

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