早川書房編集部編『伊藤計劃トリビュート』2020年05月07日 21:25

16年 4月29日読了。
 アンソロジー。まえがきに依れば主題は「テクノロジーが人間をどう変えていくか」だが、参加者が伊藤計劃の名に引っ張られたのであろうか、暴力や戦争、死に纏わる主題が色濃い。
 核兵器や毒ガス、生物兵器などが登場して、戦争に新たな規則が生まれた。別に倫理的な要請ではなく絶滅を避けるためだが、藤井大洋「公正的戦闘規範」では情報や物語が新たな戦争の規則を産み出す過程を描いている。
 短編だから仕方ないのであろうが、仁木稔「にんげんのくに」は文化の解釈が一面的に過ぎ、王城有紀「ノット・ワンダフル・ワールズ」は進化の解釈が一面的に過ぎるように感じた。つまり、著者が設定した主題に寄り過ぎている。紙数が中途半端なんじゃないかな。もっと短くして読者の目を逸らさずに一気呵成に結末に雪崩れ込むか、長編にして文化や進化の多面的多様性を充分に描いてから主題に向けて収束させた方が説得力が出たのでは。
 伴名練「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」は、屍者が生者を支配するという逆転が秀逸。全体の構成は巧いとは思わないが、ガジェットというかキッチュというか玩具箱をひっくり返したようなアイデアの詰め込み具合が楽しい。
 『虐殺器官』と『ハーモニー』は読んだが、伊藤計劃という作家は俺には余り強い印象を残さなかった。その辺りが俺のSFファンとしての「勘の悪さ」であろう。感じたのは、種としての人類に対する絶望。その絶望を乗り越えたいのだがまだ手掛かりもないという途方に暮れた感じ。それでも「問う」事は止めない、そんな感じである。俺の気持ちを投影しているだけかも知れない。

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