イアン・マクドナルド著『旋舞の千年都市』上下2019年11月08日 21:47

15年 5月14日読了。
 可愛げがなく親しみが持てない主人公達に、読み進むに連れて愛着が湧いて来る処がなかなか良い。神秘主義と先端技術が融合しているのか分離しているのか良く判らないまま混ざり合っている具合も面白い。
 物語の背後に流れているであろう、極大の物から極小の物まで貫いている普遍的で超越的な何か、フラクタル神秘思想とでも呼ぶべき主題はもっと強調されても良かったのではなかろうか。そういうフラクタル的繰り返しは空間だけでなく時間的にも現れているように思われるが、それもちょっと見えにくい。全体に近未来のイスタンブールという舞台の「魔都」性がもっと強く出れば数段魅力が増したのではなかろうか。
 それから、これは最近SFを読んでいて良く思う事なのだが、面白いんだけどその面白さの質がどうもSF独特の物ではない感じがする。普通小説、などという分野があるのかあり得るのか判らないが、サスペンスとか冒険小説とかハードボイルドとかでも表現し得る質の面白さに思えて仕方がない。
 それでは、俺の考える「SFに特有の面白さ」とはどんな物かというと、多分、宇宙観とか生命観とか人間観とかそういう「認識の枠」を解体しないまでも揺さぶりを掛けて来るような物、ではないかと考えている。

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