小野寺整『テキスト9』2019年10月20日 21:37

15年 4月 1日読了。
 面白かった。ストーリーを書いても意味がないのでキーワードを列挙してみる。言語、世界の翻訳と解釈、認識の翻訳と解釈、語る者と語られる者、分身と変身、階層世界、循環構造、知性、自己言及性、創世神話、因果の混乱。思弁的ナンセンスとでも呼べば良いか。ラベルを拵える事には意味がない(ナンセンス)か。
 言語と認識の問題を扱い、語る事と存在の問題を扱っているのでどうしてもメタフィクション的に成るが、それほど緻密な作りはしていないようなので、やや安心して読む。異世界への転送前に身に着ける、この世界の情報を大量に含んだ一種の防護服という物が、意味ありげに登場するのだが、何ら機能を果たさないまま脱ぎ捨てられてしまうという辺りに、作りのユルさが感じられる。一語一語丁寧に読み解くような態度で読む性質の物ではないらしい感じがする。
 様々な思弁的ガジェットが散りばめられて、と言うよりぶちまけられている。時間の混乱に依る因果の循環と同時に、階層的世界の上下関係も循環的な処がありそうで、その他にも循環という主題が見え隠れし、その辺りに鍵がありそうである。ナンセンスなんだから鍵を開いた処で何もないのかも知らぬが。

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